小さくても評判がいい会社だとやる気が出る
次に、希望していた会社に入社したB君のケースを見てみましょう。決して大手ではないが、希望していたV社に入社することができたB君。V社は規模は大きくないものの、経営理念が明確であり、先進的な経営をすることで世間的に名が通っていました。
優秀な人材が集まり、若くして重要な仕事を任され、どんどん成長すると評判の会社です。離職者もそこそこいるものの、独立したり、他社の重要なポジションに転身したり、社外でも活躍している人が多くいます。元Vと言われ、労働市場での人気も高いのです。職場は成果主義が徹底しており、仕事はやはり厳しいが、そういう会社だと覚悟して入ってきたわけだし、多少のことで音を上げるわけにはいかないとB君は思っています。社外の人に名刺を差し出すと、「ああ、Vにお勤めなんですね」と、常に好感をもって受け止められることも有り難いとB君は思います。
A君の場合は、入社時点からモチベーションが地を這っていたわけですが、好ましいことがあってもポジティブな感情は抱きづらく、逆に、ちょっとしたことでネガティブな感情を抱きやすい状況にあります。
一方のB君は、多少のことがあってもネガティブに振れることはなく、厳しい中にあってもポジティブな感情を維持しやすいのです。これらは企業のブランド力に拠るものです。企業の対外的認知度が高く、評判が高い場合、そこに所属する社員は自尊感情を抱きやすく、それは仕事への満足感につながり、置かれた状況や与えられた役割への納得感にもつながります。
「組織風土」は入社後の成長に影響大
もう一つには、「組織風土」があります。この点も、根源的欲求のカギである、人間関係や成長と強く関わっており、モチベーションを持続するうえでとりわけ重要な要素です。
元同僚のE君は、外資系コンサルティング会社から、財閥系の中堅メーカーX社のマネジャー職へ転身しました。まだ30代前半であり、その会社のマネジャー職としては最も若い人材となるとのことでした。面接の際に、「我が社は財閥系らしく、少々お堅い風土があるかもしれません」と聞いていたことを、入社後に思い起こすことが多かったといいます。面接の際はさほどのことでもないと思い、気にも留めなかったようですが、実際に入社してみると、何かにつけその点が壁となって立ちはだかってくることに驚かされたそうです。