子供向け「モスバーガー」で将来のファンを育てる

そして、競争激しい業界だからこそ、マーケティング戦略を立てる上では「顕在的ニーズと消費者の本当のインサイトには、時差があることを念頭に置いている」と安藤さんは語る。

「あまり食のトレンドや流行を先取りしすぎても、消費者の本当に気持ちに応えられず、結果として受け入れられないことが多いと思っています。モスバーガーに関しても、流行に敏感なアーリーアダプターを狙って何度か失敗しているので、マーケティングをする上では社会的な成熟度や消費者の反応を意識しています。王道で不朽の商品だからこそ、慎重に世の中の体温を推しはかりながら、モスバーガーらしさを訴求できるように努めています」

2020年7月にはファミリー層向けの「ワイワイモスチーズバーガーセット」を発売した。2009年から販売されている子供向けセットメニューの「モスワイワイセット」のラインナップに、モスバーガーを子供向けにアレンジした商品を加えたのだ。将来に向けて、「モスバーガー」という商品のファンを増やすことが狙いだ。

画像提供=モスフードサービス
モスバーガーの将来のファンを作るため、子供向けの商品として発売した「ワイワイモスチーズバーガーセット」

「往年のファンは50代を迎え、モスバーガーからそろそろ卒業していく年齢に差し掛かっているため、モスバーガーをまだ知らない層にもアプローチする必要があると考えています。『ワイワイモスチーズバーガーセット』はモスバーガーから生のオニオンとマスタードを抜いて、子供でも食べやすいように工夫した商品。親子で一緒に味わいながら、モスバーガーを好きになってもらい、将来のファンになってもらえるような狙いで販売しています」

アフターコロナを見据えて、カフェ業態に注力

昨年から続くコロナ禍により、飲食店は軒並み苦境に立たされている状況だ。先行き不安な社会情勢のなか、モスバーガーはどのような対策を行っているのだろうか。

筆者撮影
Oisix(オイシックス)とコラボしたミールキットの商品が好評を得たことを受け、今後はECによる冷凍食品の物販も準備しているという

「リベンジ消費で80%くらいはお店に戻ってくると考えています。デリバリーに関しては2019年から早々に取り組んでいたので、今後も主力のチャネルとして運用しつつ、アフターコロナを見据えた業態『モスバーガー&カフェ』を、これから店舗拡大していく予定です。モスカフェのDNAを受け継いだ業態で、朝食やディナータイムはもちろん、ドリンクメニューを充実させることで、ティータイムも利用いただけるような形で展開していきます。食事やリモートワーク、カフェ利用など多様なニーズを持ったお客様が入れる業態を作っておけば、たとえ揺り戻しが起こって価値観や志向が変化しても対応できると思っています」

このように、「時代や世の中の変化に柔軟に対応していく力こそ、モスバーガーが長年愛されてきた所以だ」と安藤さんは強調する。

「資本力があって企業が生き残るわけではなく、時代が変わろうともフレキシブルに対応できるかどうかが大事です。現時点では、テイクアウトの売上が7割くらいですが、アフターコロナでは揺り戻しによってイートイン需要が必ず復活してくるでしょう。そんなときでも、消費者ニーズに応えられるように、商品や店舗業態をあらかじめ準備しておけば、変化に屈することなく生き残ることができる。それこそがモスバーガーの強みであると捉えています」

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