アメリカの人気ハンバーガーを日本人向けに改良
「モスバーガー」は1972年のモスバーガー創業当時から販売してきた看板商品だ。
どのようなきっかけで誕生したのか。「モスバーガー」を展開するモスフードサービス上席執行役員でマーケティング本部長の安藤芳徳さんは「創業者の櫻田(慧・元会長)が、アメリカにある老舗『トミーズバーガー』のハンバーガーを参考にし、日本人の味覚に合うように改良したのがモスバーガーだった」と話す。
「トミーズバーガーのハンバーガーはチリソースが入っているのが特徴でした。しかし、味をそのまま再現しても、チリソースの辛さは当時の日本では受け入れられない状況でした。そこで、日本人に親しまれているミートソースに着目し、まろやかでコクのある味を出すことに注力しました。ミートソースを主体に辛味を出しているのがチリソースなので、チリソースをいかにマイナーチェンジさせ、日本人の口に合う味を作り出すかが肝だったのです。単に辛味を抑えるといった引き算の思考ではなく、日本人の繊細な味覚にも合う理想の味を求め、納得のいくミートソースが完成するまで100回以上の試作を繰り返しました」
ミートソースは「13回」リニューアルされてきた
ミートソースはこれまでに13回ものリニューアルを重ねている。
安藤さんは「時代の変遷に合わせて、求められる消費者嗜好の変化に対応してきた」と説明する。
「ヒット商品だからと、何も変えずに販売し続ければ、いずれ時代の変化についていけなくなり、短命で終わってしまう。本質的なおいしさやこだわりは変えず、その時々の時代背景や食のトレンドを見極めていく気概が非常に大切なのです。だからこそ、おいしさを引き立たせる要素として、ひときわ重要視しているミートソースを何度も刷新してきました」
だが、リニューアルしたからといって、その味が必ずしも消費者に支持されるとは限らない。
モスバーガーはどのようにして、時代に合った味を見出しているのか。
「味のリニューアルを行うときは、もちろん定量的なデータに基づいた科学的分析も参考にしますが、最終的には担当者の経験値や感覚を重視しています。というのも、最適化されたデータや定量的側面を重視すると、どうしてもロイヤル顧客が求める味に寄ってしまう。常連でモスバーガーのファンだからこそ、ポジティブで積極的な回答をもらえやすい分、そこだけに注目していたのではお客様の潜在的ニーズに合わせた味を出せないと考えています。ロイヤル顧客に飽きられないで、かつ新規のお客様にもおいしく食べてもらえる味を追求する姿勢を貫くように心がけています」