途上国が中国製ワクチンに頼らざるを得ない理由

プラハを拠点に中欧への中国やロシアの影響力を調べている「マップインフルエンセ(MapInfluenCE)」のベロニカ・ブラブロバ研究員は中国製ワクチンの有効性について、臨床試験が行われた国による評価のばらつきを指摘する。

「中国製ワクチンの有効性を巡る疑念は物議を醸す臨床試験の結果が発表された時からつきまとっている。ブラジルで行われたシノバック製ワクチンの臨床試験で有効性は当初78%とされたが、そのあと米食品医薬品局(FDA)の承認ラインである50%をわずかに超える程度に修正された。一方で、昨年12月にはトルコが有効性は91%という予備結果を発表するなど、臨床試験を巡るプロセスが不透明だ」

シノファーム製ワクチンを接種している唯一の欧州連合(EU)加盟国のハンガリーでは、十分な抗体ができていない住民が増えている。中国製ワクチンが広く接種されたチリ、モンゴル、セーシェルで感染拡大を防げなかったことが国民の疑念をさらに深めている。しかし、よく考えると、マスク着用や対人距離の確保といった非医薬品介入の解除が早すぎたことが原因である可能性もうかがえるという。

一方でブラブロバ研究員は、米欧製ワクチンの扱いづらさ、供給不足が途上国に中国製ワクチンを選択させているとも筆者に指摘する。「中国製ワクチンの有効性は低いと指摘されるが、ファイザー製やモデルナ製はより高度な操作、特に冷凍保存など管理が難しいため、途上国にとっては接種の機会が少ないことに留意することが重要だ。米欧のワクチンメーカーは米欧のニーズを満たすのに四苦八苦しており、途上国への輸出は依然として限られている」