星野リゾートが「所有」するホテルの稼働率を比較

さて、星野社長は所有と運営を完全に分離する目的で、所有を担当する星野リゾート投資法人というREITを2013年に立ち上げました。ここが面白いところで、星野リゾートは非上場企業ですが、星野リゾート投資法人は上場REITなのでそちらで開示情報を見ることができる。今回の記事ではまず、REITの開示情報から星野リゾートに何が起きているのかを数字で見てみたいと思います。

図表=筆者作成

星野リゾート投資法人は星野リゾートが運営するホテル・旅館のうち19の施設を所有していて、その稼働率を公表しています。同時にそれ以外の企業が運営するホテルも約30所有しています。前者を代表するホテルとして星のや軽井沢、リゾナーレ八ヶ岳、界 箱根を、後者を代表するホテルとしてANAクラウンプラザホテルの福岡と金沢、ハイアットリージェンシーの大阪を選んでグラフにしたのが図表1です。

寒色系のグラフの線が星野リゾート運営の3ホテルですが、コロナ以前の客室稼働率は80%と100%の間のレンジにきれいにおさまっていたことがわかります。一方でANAとハイアットはざっくりといえば60%から90%の間。ホテルの運営力の差はコロナ以前から歴然でした。

GoToより一足早く稼働率が回復していた

ところがコロナは全てに等しく試練を与えます。新型コロナが発生した昨年4月、5月に星野リゾートの客室稼働率は急落し軒並み30%を割るようになりました。星野社長が「倒産確率38.5%」という数字を公表したタイミングです。

ここからの回復が早かったのが星野リゾート運営のホテルです。GoToトラベルが開始するよりも一足早く、7月には主要ホテルの稼働率は80%以上に戻ります。その後、コロナ第3波で緊急事態宣言が再発出するまではずっと稼働率が90%台後半に張り付いている。いったい他と何が違うのでしょうか。

グラフを見てわかるとおり、観光地である福岡と金沢のANAクラウンプラザもGoToが本格化する10月から12月までは若干の回復をして息を吹き返しています。一方でインバウンドが途切れた大阪のハイアットリージェンシーは2020年を通じて苦戦が続いている。こちらの絵柄の方が、日本全体の観光業の縮図といえるはずです。