第1に、自社販売の商品を自前で取り揃え、在庫を確保して配送まで手がけるアマゾンと違って、アリババは自社運営のマーケットプレイスを外部出品業者に提供するビジネスモデルである。在庫を抱えたり、自前の物流システムを運営する必要がない。
第2に、アリババは、どんな分野にも対応できる万能型のマーケットプレイスとなるため、以下の5つの主要プラットフォームを擁している。
2.「タオバオ(淘宝網)」……B2C(消費者向け)とC2C(消費者間)の商取引プラットフォームで、中国最大のオンラインショッピングサイト
3.「アリエクスプレス(AliExpress)」……中国国外の消費者向けの電子商取引サイト
4.「Tモール(天猫)」……有名ブランドの真正品を販売するB2Cサイト
5.「Tモールラグジュアリーパビリオン」……売り手のブランドも消費者も完全招待制のサイト
デジタルとフィジカルの市場を別々に捉えない
アリババが成功した一因として、販売チャネルのこだわりを捨て、デジタル(オンライン)とフィジカル(実店舗)の垣根を越えて、消費者の動きを点ではなく、1本の線として捉えた点が挙げられる。
アリババのヨーロッパ地区ファッション・高級品担当ディレクター、クリスティーナ・フォンタナが例として挙げてくれたのは、Tモールサイトに出店している、あるファッションブランドだ。同ブランドでは新店舗の出店に最適な立地を検討していた。
「このブランドは、北京のいくつかの地区を候補に挙げていたため、暫定的にポップアップストア(期間限定ショップ)を開設しました。それがとても素敵な店舗だったんです。そこで私たちは同じ体裁で3Dで再現したショップをオンラインにも開設したんです。このブランドは、ポップアップストアを開設した地区に本格的な旗艦店を出店した場合、十分な客足が確保できるかどうかを見極めようとしていました」
そこで同ブランドとアリババの双方が持つデータを駆使して、ポップアップストア関連オンラインメディアを視聴した主要顧客を特定した。その後、この情報から特定されたユーザーをポップアップストアのグランドオープンに招待した。オープンイベントの模様はオンラインで配信され、何百万もの消費者に告知された。
つまり、特定の顧客データを使って価値の高い顧客を割り出し、特定イベントをきっかけに実店舗に招待し、イベントの模様はオンラインでストリーミング配信して膨大な数のユーザーにも体験してもらうことが可能なのだ。
オンラインでの配信に対するユーザーの反応も、アリババや同ブランドにとって貴重なデータとなる。メディア、エンターテインメント、顧客の反応、データ、知見という循環型エコシステムが成立しているのだ。