災害時に便利なオフライン取引も可能

なお、デジタル人民元では、オフラインの取引も可能になっている。つまり、2つのウォレットを近づけると、NFC(近距離無線通信)やBluetoothなどの通信が行われて取引が可能になる。蘇州の実験では、この形態の取引も実験された。

これは、災害時などインターネットを用いることができない場合においても、送金が可能であるようにするための仕組みだ。法定通貨であるから、いかなる場合でも送金が可能でなければならないわけで、そのためにこのような仕組みが導入されている。こうした取引は、直接にはブロックチェーンに記録されないと考えられる。

デジタル人民元のウォレットとしては、ハードウォレットも作られている。これはスマートフォンのアプリではなく、人民元のウォレットに特化した装置だ。

スマートフォンの場合はインターネットに接続されているので、アタック(サイバー攻撃)にう機会がある。また、紛失したり、機器を壊したりする危険もある。ハードウォレットはウォレットの機能だけに特化しているので、普段はインターネットから切り離して安全な場所に保存しておくことができる。

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このような機器が作られるということは、巨額のデジタル人民元を資産として保有することも想定されているからではないかと考えられる。

現在の電子マネーはどうなるのか?

まだはっきりしていない点もある。その1つは、AlipayやWeChatPayなどの電子マネーがどうなるかだ。

これらが4大銀行と同列の仲介機関になるのだろうか? そうなるとの報道もあるが、もし排除されれば、デジタル人民元は電子マネーよりさまざまな面で優れているので、電子マネーは競争上不利な立場に立つ。仲介機関になるにしても、現在の電子マネーの仕組みではなく、現在とはかなり違う形になる可能性もある。

デジタル人民元の真の狙いは、巨大化しすぎたAlipayやWeChatPayなどの力を削ぐことにあるとの見方が可能だ。

アントが上場の直前に当局の介入で突然上場が中止になったのも、中国当局が、Alipayに対して友好的ではないことを示すものなのかもしれない。