AliPayが生み出す巨大な企業価値
アリババ集団傘下の金融会社アントグループの企業価値が急速に大きくなったのは、「決済サービスを無料にし、そこから得られるデータを活用して収益を上げる」という新しいビジネスモデルを確立したからだ。
この基礎にあるのは、「芝麻信用」という信用スコアリングだ。AliPayの取引データから、AIが利用者の決済履歴や、事業者の資金使途などを解析して、信用力を評価する。
AliPayの流通によってきわめて詳細な取引データが得られる。アントはこれを用いて信用スコアリングを行い、それを融資の判断に使うのだ。ここから得られる収益がアントを支えている。
アントの巨大な企業価値は、これによって生み出されている。
デジタル人民元の真の狙いはデータ?
ところが、中央銀行デジタル通貨であるデジタル人民元が発行されれば、電子マネーの場合と同じように詳細な取引データが、中国人民銀行(および中国共産党)の手に入る。これは国民支配のためのきわめて貴重なデータだ。
中国はすでに2019年に「暗号法」を制定している。その中で最も重要なのは、最高クラスの暗号は国家が管理するとしていることだ。
これは、デジタル通貨によって得られる情報を中国政府(共産党)が管理することを狙ったものではないかと考えられる。
デジタル人民元の真の狙いは、AliPayなど民間の電子マネーの成長を抑えることにあるのかもしれない。デジタル人民元によってマネーの世界をコントロールしていくという中国政府の戦略が見えてきた。