「武器」を獲得するための「学び直し」

「学び直し」が必要となる基本的な理由は、このような条件変化にある。学歴にこだわっていては、今後の社会を生き抜いていくことはできない。

すでに述べたように、学歴とは、一般的な能力を示すための「シグナル」である。これまでの勉強は、シグナルを獲得するためのものだった。

しかし、新しい社会で必要とされているのは、スキルや能力そのものだ。いわば、仕事をするための「武器」である学び直しとは、こうした意味での「武器」を獲得するためのものだ。

勉強を続けないかぎり、企業の中での位置づけは、不安定なものにならざるをえない。学び続けないと仕事がなくなるという危機感を持つ人も多い。

30代の会社員の4人に3人が「再び学びたい」と考えているそうだ。多くの人たちが、時代の変化を感じているのだ。

さまざまな調査によると、再教育へ参加する人の割合が高い国ほど、時間あたり労働生産性が高い。このため、世界の各国が、学び直しを競い合うようになっている。

写真=iStock.com/metamorworks
※写真はイメージです

いつまでも勉強を続けよう

学歴社会では、大学入試までは、死にもの狂いの勉強が続く。しかし、大学に入学すると、疲れきって勉強をやめてしまう人が多い。こうした人たちにとって、勉強とは大学入試までのものでしかない。

しかし、いまの社会では、常に勉強が求められる。変化する社会では、知識の有効期間は非常に短くなるからだ。学生時代の勉強から進歩しない人は、変化に取り残される。

もちろん、社会に出てからも勉強を続ける人は、これまでもいた。生涯教育の必要性は、昔からいわれてきたことだ。

しかし、これまでは、そうした努力が正当に報われたとはいい難い。それより、組織の人間関係を円滑にすることのほうが重要だった。

その状況が大きく変わり、学び直しを続けない限り生きられない時代になったのだ。