「チョコの壁がズレる…」夢に出てくるほど

今回の「チョコの壁」開発では、どんな苦労があったのだろう。

「まず、実験室レベルではうまくいっても、工場の生産ラインの試運転では安定しませんでした。毎週のように試作品をつくってはトライの繰り返しでした。

またアイスクリーム規格である、バニラモナカジャンボの品質を維持する設計にも苦労しました。モナカの皮にはアーモンドのような隠し味を入れたり、クリームも一部変更したりして、全体の味が損なわれないようにしています」(森田さん)

撮影=プレジデントオンライン編集部
チョコの壁

最初の課題では、研究所内に工場と同じ設備(ラボ)を造り、試作を続けたという。

もともとチョコモナカジャンボは、パッケージにも「パリパリッ!」と掲げるほど、パリパリ感を追求する。アイスでは珍しい「鮮度管理」を掲げ、商品生産の翌日に出荷。自社在庫は5日分しか持たないよう心掛けている。一方、バニラモナカはその域に達しておらず、パッケージも「コクうまアイス&洋菓子風もなか」で訴求する。

チョコの壁が中央につかないとパリパリ感が損なわれる。開発段階の森田さんは、就寝中でも「チョコの壁がズレて、うまくいかない夢を見ました」というほど悩んだという。

菓子メーカーならではの「皮」の工夫も

ところで、モナカアイスはそこまで吸湿を避ける必要があるのか。別の食品、例えばお店で食べる「天丼」に乗る天ぷらの衣はサクサクだが、「天丼弁当」の衣は食べる時にタレが浸みこみしんなりとなる。だが、その味も消費者は支持していると聞くからだ。

「モナカの皮のパリパリを研究していますが、うまくいかない時は『本当にパリパリを求めているのか』と愚痴も出ます(笑)。でも、皮のパリパリとシナシナを比較すると、パリパリのほうがおいしいという人が圧倒的です。パリパリ食感が心地よいと感じる脳の状態を測定する研究も始めています」(森田さん)

「天ぷらの衣とは違い、モナカはしけても味が浸みこまない」と話す森田さんに、村田さんもこう続ける。

「森永製菓のモナカアイスの皮は、パリパリを前提としており、小麦の配合も違います。菓子メーカーとして、長年ビスケットやクッキーなどで培った技術も応用されているのです。実際に、チョコモナカジャンボでは2001年からパリパリ感を打ち出し、商品改良と鮮度管理を続けた結果、お客さまの支持を受けて売り上げも拡大していきました」