「全体の4割」なぜシニア層に人気なのか

実は、「バニラモナカジャンボはシニア層の支持が高い」と聞くが本当だろうか。

「本当です。全体の4割以上はシニアのお客さまのご支持を受けています。調査データを見ても、ノベルティアイス(1個売りのアイス)全体平均と比較して、ほぼ倍の支持を受けています」(村田さん)

なぜ、シニアに人気なのか。

「まず、モナカアイスは手で触らず食べられるのがいいと言われます。60代以上の消費生活を聞くと、現役の方も以前のように残業をしなくなり、飲み会も減って自宅で過ごす時間が増えた。在宅生活で口さびしくなり、アイスを食べたらおいしかった。それ以来、アイスを買うというケースが多いですね。強く主張しないアイスが総じて好まれます」(村田さん)

マーケティング本部 冷菓マーケティング部の村田あづささん
撮影=プレジデントオンライン編集部
マーケティング本部 冷菓マーケティング部の村田あづささん

コロナ禍で飲み会が減って在宅時間が増えたのは、働き盛り世代も同様だろう。1個100円~200円程度の商品が多いアイスは財布にもやさしく、年金生活やコロナ収入減生活での息抜きでも選ばれやすい。

日本は高齢化社会になったのに、これまでの消費者調査では60代以降のデータが少なかった。だが徐々に増えてきた。アイスでいえば、年配者=柔らかい商品を好むのではなく、「あずきバー」(井村屋)のような固いアイスも大好きだ。「昔と現在の60代70代は、行動特性がまるで違う」はマーケティングの鉄則だが、今後の調査結果にも注目したい。

進化する「ながら食べ」にどうコミットするか

昨年と今回、村田さんに聞いた「コロナ禍のアイス意識」の話も紹介しよう。

最初の緊急事態宣言下では、現在よりもっと日本中の外出自粛ムードが強く、2020年4月から“マルチパック特需”が起きた。4月~7月の市場全体は対前年比約102.9%(インテージ調べ)を記録し、巣ごもり用に紙箱や袋に入った複数個数のマルチパックが売れた。

購入時間帯にも変化が出ていた。これまで目立たなかった「9時~11時」「13時~14時」に買う人が増え、逆に19時以降は減ったという。この流れは現在も続く。

喫食シーンで目立つのは、コロナ以前からの「ながら食べ」だ。仕事で一段落した際のながら食べは、在宅勤務では特に進んだ行為。筆者の取材結果でも、息抜きアイスが増えたと答えた人が目立つ。そして最も多いのが「スマホをいじりながら」だ。

「仕事のメールが届いたり、ニュースを見たり、仕事後の動画や映画視聴もあります。そうなるとワンハンド(片手)で食べられるアイスが優位になる傾向にあります」(村田さん)

そうした際でも「五感で楽しむ」のが食品だ。モナカのパリパリ感を追求し、モナカの皮とアイス本体のバランスにこだわる。消費者を飽きさせない細かい改良はこれからも続く。

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