ペトロンが「生活になくてはならないもの」になる
宗教を代替するとは実に壮大なミッションですが、フォーリーCEOは本気です。それはすでに現実のものになろうとしています。
フィットネスバイクをDXによって進化させ、サブスク型のオンラインレッスンで全米に浸透させたペロトン。さらに各地域にリアル店舗を配置したことで、オフラインの「ペロトン・コミュニティ」も生まれつつあります。
こうなると、ペロトンは単なる商品とはいえません。もちろん顧客は「自宅で運動がしたい」というシンプルな動機でペロトンのフィットネスバイクを購入するはずです。しかし、ペロトンが「生活になくてはならないもの」になるまで時間はかからないでしょう。
「ペトロンする」こそが価値の正体だ
フィットネスバイクが自宅に運ばれ、セットアップされ、物流スタッフから手厚い説明を受ける。インタラクティブなオンラインレッスンを受け、新しい仲間とともに、成果を競い合う……。その結果生まれたのが「ペロトンする」という言葉です。それこそ、ペロトンが顧客に提供している価値の正体なのです。「ペロトンする」とは、バイクをこぐことだけを指してはいません。コミュニティに所属する、音楽を楽しむ、学ぶ、仲間とつながる。そこには、宗教的な要素が多分に含まれているのです。
コロナ禍で在宅フィットネス需要が増加したことを追い風に、急成長を遂げたペロトン。しかしコロナは成長のきっかけに過ぎません。ここで強調すべきはペロトンがフィットネスバイクという事業の本質を見誤らずDXしたこと。「売って終わり」にせず顧客と繋がりコミュニティを形成すること。モノづくりのみならずカスタマーエクスペリエンスの追求そのものに「徹底的なこだわり」があること。ここには、DXで立ち遅れている日本の製造業が学ぶべき点が凝縮されています。