日本のワクチン接種率はインドよりも低い
NHKの報道によると(Our World in Dataの集計、5月27日更新)、ワクチン接種が完了した人の割合が最も高い国はイスラエルで、59.18%。次いでチリの40.88%、米国の39.19%などとなっている。イギリスも34.79%に達している。一方で、日本はわずか2.31%。感染が爆発して死者が相次いでいるインドの3.04%よりも低い。
今後、他の先進国が経済活動を本格化する中で、「ワクチン接種が進んでいない日本は危ないから行くな」といった判断になる懸念が出てきたわけだ。そうなると、日本経済だけが回復から取り残されることになりかねない。
実際、その予兆は出ている。
内閣府が5月18日に発表した2020年度のGDP(国内総生産)は、前年度比4.6%減と、リーマンショック時の3.6%減を超え、戦後最悪を更新したのだ。四半期ごとのGDPの年率換算は、1回目の緊急事態宣言が出た2020年4~6月期は28.6%減というマイナスを記録したが、その反動もあって7~9月期は22.9%増、10~12月期も11.6%増を記録した。そのままプラス基調が続けば、年度のGDPもリーマンショック時に達することはなかったと思われる。ところが、年明けから2回目となる緊急事態宣言が出され、2カ月以上にわたって飲食店などへの営業時間短縮などの要請が続いたことから、2021年1~3月期が再び5.1%のマイナスに転落した。
一方米国は、2020年4~6月期は31.4%減と日本よりも影響は深刻だったが、7~9月期は33.4%増を記録、10~12月期も4.3%増となった。さらに今年1~3月期は6.4%増に景気回復が加速している。マイナスの日本と完全に明暗を分ける結果になった。
コロナ死が先進国最少だった日本が、経済回復では最悪に
日本の場合、さらに状況は深刻だ。4月に入って3回目の緊急事態宣言が出され、百貨店など大型商業施設にも休業要請が出された。当初予定の5月11日でもその後延長された5月末でも宣言解除に至らず、解除の見通しが立っていない。エコノミストの中には2021年4~6月期もマイナス成長になるとの見方が出始めている。
諸外国に比べて感染者が少なく、死者も少ないことで、感染封じ込めに成功したとして「日本モデル」をアピールする識者もいた。だが、どうも状況は違っている。最も影響が軽かったはずの日本が、他の先進国に比べて大きな経済的な影響を被ることになりかねないのだ。
緊急事態宣言を出しても、欧米のように徹底したロックダウンも行わず、飲食店の休業要請をダラダラと続けた結果、感染が収まらずに経済も疲弊していく最悪のパターンに陥っている。また、切り札のワクチンの確保も後手後手に回ったうえ、確保ができても接種が進まない混乱ぶりを示した。ワクチン接種の遅れは経済復活に致命的な影響を与えることになりかねない。