現状は「1日100万回」にはほど遠い
自衛隊による大規模接種会場はわずか1カ月で稼働を始めたが、都道府県や自治体にとっても大きなプレッシャーになった。2月から始めた480万人の医療従事者への接種は、ワクチンの供給は終わったにも関わらず、2回接種が終わった人は5月26日段階で276万人と6割弱、1割以上の人がまだ1回目を打っていない。医療従事者への接種は都道府県の責任で進めてきたが、それすら終わっていないのだ。
一方、高齢者接種もハイピッチで進んでいるとはいえ、5月26日現在で2回目まで終わった人は22万人弱と0.7%、1回目が接種できた人も332万人とようやく9%を超えたところだ。1日あたりの接種回数は40万回を超えたが、菅首相が言う「1日100万回」には届いていない。
それでも医療従事者や高齢者は夏には終わるだろう。問題は現役世代へのワクチン接種がどうなるか、だ。現役世代のビジネスマンの接種が終わらなければ、経済活動を全面的に回復させることは難しい。
今後は「日本人だけが海外に出られない」となる恐れ
そんな中、恐れていたことが現実になった。米国務省が5月24日、日本での新型コロナウイルスの感染拡大を受け、渡航警戒レベルを、最も厳しい「渡航中止」(レベル4)に引き上げたのだ。
日本では4月から新規感染者が再び拡大、米疾病対策センター(CDC)が定める感染状況で「28日間で人口10万人当たり100人以上の新規感染者」といった基準を超えたとしている。CDCは「ワクチンの接種を終えていても変異株に感染し、広める可能性がある」と指摘しているという。
勧告に強制力はないが、このままで東京オリンピック・パラリンピックが開催できるのか、危ぶむ声は高まる一方だ。もちろん、背景には、日本国内でのワクチン接種率の低さがあることは言うまでもない。もっぱらオリパラが開催できるかという視点で語られているが、今後、ワクチン接種を終えた諸外国の人々がビジネスを本格的に再開し、国境を越えた移動を始める中で、日本人ビジネスマンだけが身動きが取れない、ということになりかねない。それくらい日本の接種率は低いのだ。