しかし、国を一番悪くしているのは、何もいわない、怒らない、行動しない国民ではないのか。真っ当な怒りを表すことを恐れることはないはずである。

それができない、やろうとしないのは、この国の民が「国民主権」を忘却しているからだと思う。

われわれは今すぐに始めるべきだ

白井聡は『主権者のいない国』(講談社)でわれわれにこう迫っている。

「内政外政ともに数々の困難が立ちはだかるいま、私たちに欠けているのは、それらを乗り越える知恵なのではなく、それらを自らに引き受けようとする精神態度である。
真の困難は、政治制度の出来不出来云々以前に、主権者たろうとする気概がないことにある。(中略)そして、主権者たることとは、政治的権利を与えられることによって可能になるのではない。それは、人間が自己の運命を自らの掌中に握ろうとする決意と努力のなかにしかない。つまりは人として当たり前の欲望に目覚めること、それが始まるとき、この国を覆っている癪気しゃっきは消えてなくなるはずだ」

原爆被爆と敗戦、阪神淡路大震災、東日本大震災と原発事故、今回のコロナ禍。何が起きても、その時は大騒ぎするが、のど元を過ぎればあっという間に忘れ去ってしまって、学ぶことをしない。

酒を飲むしか能のない私でさえも呆れ果てる。このような国が、他国から尊敬されるはずはない。

われわれは、自己の運命を自らの掌中に握ろうとする決意と努力を、今すぐに始めるべきである。たとえコロナ禍の中であっても。(文中敬称略)

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