大企業ではできないことを素早くやる

こうした自由で「消費者目線」のアイディアは、大企業ではなかなか商品化されにくいはず。商品が消費者に届くまでに、卸売りや小売りなど幾重もの流通経路を経なければならず、採算面からも、ある程度は大量に売れる見込みがないとゴーサインを出しにくいからです。

ですが、「弊社が珍しい商品を次々と世に送り出せるのは、企業規模だけが理由ではないかもしれない」と﨏さん。私も今回、サンコーの新商品開発の仕組みを聞いて、まさに同じことを感じていました。

ズバリ、それは「アジャイル型」の商品開発。アジャイルとは「すばやい」「俊敏な」などの意味で、たとえ完成度が不十分でも「まず市場に出してみよう」とする考え方です。

アジャイル型の開発を取り入れる業界が増えてきた

アジャイル型は、もともとシステム系のソフトウェア開発を中心に行なわれてきました。

たとえばアプリやOS、ゲームソフトなどは、仮に完璧でないまま世に出したとしても、ネット経由でアップデートすれば、日常的に更新が可能ですよね。だからこそ「まずβ版を発売してみて、市場の声を聞きながら改良していこう」と考えやすい。

サンコーも、起業した山光社長自身がデジタル系に強かったため、似た発想があったのかもしれません。

昨今、アジャイル型はIT業界を飛び出し、家電や自動車開発にまで取り入れられるようになりました。パナソニックが20年に発売を開始した、集中力を高めるウェアラブル端末(「WEAR SPACE」)や、テスラの電気自動車などは、その一例です。