わざわざキッチンで調理するのは面倒

「おひとりさま用の弁当箱炊飯器を発売する前から、『一人用のコンパクトな炊飯器は、確実に需要がある』との感触を得ていました」と話すのは、同広報担当の﨏(えき)晋介さん。

というのも、サンコーでは17年、一人分のご飯を水蒸気で加熱して炊ける、ハンディ炊飯器(「蒸気で炊く! お一人様用ハンディ炊飯器」)を発売していました。

背後には「キッチンが狭くて、従来の炊飯器が置けない」などの声があったそうですが……、もう一つ、このころから「わざわざキッチンに行かなくても、(テーブルの上などで)作って食べられたらいいのに」との、消費者ニーズの高まりを感じたといいます。

「蒸気で炊く! お一人様用ハンディ炊飯器」
写真提供=サンコー
「蒸気で炊く! お一人様用ハンディ炊飯器」

「というのも、他社の売れ筋を見たとき、当時から卓上型のスチーマーやフライヤーなどの調理器具が人気だったんです。また一人暮らしの男女にとって、キッチンまで出向いて調理するのは、結構面倒なんですよね」(﨏さん)

職場でも「炊き立て」が食べたい

17年発売のハンディ炊飯器は予想以上に売れ、消費者からはさらなるワガママが寄せられた。それが、「職場でも“炊きたてのご飯”が食べられたらいいのに」。

こうした声の背後には、「キッチン以外で(自宅で)ご飯が炊けるなら、職場でも炊ける炊飯器が作れるはず」との視点があったのでしょう。確かに、「自宅」が「職場」に置き換わるだけなので、理論上はすぐ商品化できそうですよね。

「でも、当時のハンディ炊飯器では、0.5合のご飯が炊き上がるまでに50分程度かかっていた。これではお昼休みが潰れてしまいますから、せめて15~20分程度にまで短縮する必要があったんです」(﨏さん)。

そう、「職場でも炊ける」を可能にするためには、炊飯の「大幅な時短化」が大命題だった。かなりの難題に思えますが、結論から言うと、サンコーはこれをわずか1年弱でクリア、半合あたり約50分だった炊き時間を、おひとりさま用弁当箱炊飯器で「約14分」、つまり3分の1以下にまで短縮したのです。

一体なぜそんな偉業を、短期間で達成できたのでしょう?