「リモートワークできる人/できない人」の格差が広がる

リモートワークの進展は、住宅や土地に関する人々の意識も変えていくと考えられます。これまで日本の地方では、若者が地元の大学や専門学校を出た後、東京や大阪、名古屋などの大都市に本社がある企業に就職してお金を稼ぐというのが、「中流の生活」を手に入れるための一つの選択肢でした。

山田昌弘『新型格差社会』(朝日新書)

しかしリモートワークが普及することによって、「学校を出たら都会に行って稼ぐ」というモチベーションが下がることが予想されます。今回のパンデミックが顕わにしたことの一つが、「人が密集して暮らす都市は感染症に弱い」という科学的な事実です。実際、新型コロナの感染拡大によって発生した死者・重症者の多くは、東京や大阪などの都市部に集中しています。地方にいながらもリモートワークでお金が稼げるようになれば、感染症のパンデミックや大規模な地震などの災害リスクが高い都市に住居を構えることは、避ける選択が増えていくことでしょう。

とはいえ、一朝一夕には変わりません。都市部には人がたくさんいて、その生活を維持するためのエッセンシャルワークの需要も大きいことから、大都市に住み続ける人もいるはずです。「リモートワークができる人」は都市近郊の田舎に移り住むようになり、「リモートワークができない人」は都市に密集して暮らし続けるといったように、人口の再編成が起こっていく可能性があります。

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