子供のなりたい職業第1位が「会社員」⁉

「会社員」が人気を集めています。

全国の小学生(小学校3~6年生)、中学生、高校生の計3000人を対象に調査を実施した「大人になったらなりたいもの」ランキングで、「会社員」が男子の部で堂々のトップになったというのです(第一生命保険、第32回「大人になったらなりたいもの」調査結果より。2021年3月17日発表)。

「会社員」を夢見る子どもは年齢が高いほど多く、高校生では22.2%で、2位の「ITエンジニア/プログラマー」(11.5%)を大きく引き離しました。女子の部でも小学生でこそ4位とふるいませんでしたが、中学、高校生ではダントツの1位でした(13.6%、20%)。

コロナで苦戦しているフリーランスや自営業、雇い止めにあった非正規雇用の人たちを見て、「会社員になれば安定した生活ができる」と子どもたちは考えたのでしょうか? あるいは「ウチで仕事してるパパみたいになりたい!」とリモート勤務する会社員を夢見た? はたまた「安定した仕事についてほしい」という親の願いが反映された結果でしょうか?

成功
写真=iStock.com/Mikolette
※写真はイメージです

平成の30年間で変質した「会社」

いずれにせよ、子どもたちには申し訳ないけれども「会社員」になっても、ずっと幸せでいられるとは限りません。いえ、子どもたちが夢見るような「会社員」はもはや幻想でしかないのです。

確かに、かつて「会社員」は幸せの象徴でした。日本の職場はストレス研究が必要ないくらい、人間の摂理に合致したいくつもの大切な制度を会社員に施し、人が秘める能力を最大限に引き出す「理想郷」でした。

一方、会社員は「会社のためにがんばろう! いいものを作ろう!」と会社が繁栄するように働きました。会社も会社員も「一緒に幸せになろう!」と夢を共有し、会社と会社員双方に利益をもたらす経営が行われていたのです。

しかし、平成の30年間で会社と会社員の関係は大きく変わりました。本来、会社は「人の生きる力を引き出す最良の装置」なのにその役目を放棄し、「経営とは人の可能性にかけること」なのに、その可能性より目先のカネを優先するようになった。会社員を非人格化したのです。

無節操に散々けしかけ、走らせ、持ち上げ、ある日突然、はしごをはずす。それが今の会社です。