労働時間のオンとオフが曖昧になる

就労時間に関する問題も生まれました。自宅で仕事を行うリモートワークは、労働時間のオンとオフが曖昧になりやすく、かえって長時間労働になってしまうというものです。無理もありません。これまでの一般的なスタイルは、会社で「勤務」することが就労の基本でした。1時間ほどの通勤時間をかけて職場に着くことで仕事のスイッチが入り、就労が終わって職場を離れてからは自由、という時間感覚が身体に染みついています。

リモートワークによって自宅が職場になったことで、際限なく仕事をしてしまったり、あるいは逆にまったく仕事のやる気を失って、昼間からこっそり酒を飲んだりというような、“リモートノーワーク”の人も増えているようです。

ベッドに横たわっている男性
写真=iStock.com/chee gin tan
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雇用主側にとっての危惧は、このようにリモートワークを導入したせいで、社員の生産性が落ちてしまうことです。そのためこの新しい働き方の広がりとともに、新たな「管理」の方法も模索されだしています。

社員の顔を撮影する「遠隔監視サービス」が登場

その一つが、社員の「遠隔監視」です。

たとえば「リモートワーク中の社員の勤務状況を一目で把握できます」というITサービスが生まれ、「リモートワーク導入による会社の業績低下を感じている経営者向けのサービス」だと謳っています。パソコンのカメラを通じて社員の顔をAIが認識し、PCの前に座っていた時間を自動的に記録するという仕組みで、映像はサーバーに記録され、画面も同時に録画されることで情報漏洩を防ぐというものです。

ランダムなタイミングでPC画面が撮影されて上司のもとに送られることから、勤務中に無関係なネットサービスを閲覧することなどを防止でき、自宅にいる従業員の「見える化」ができる、というのが売りでした。

リモートワーク中の従業員を遠隔監視できるITサービスは他にもいくつかあり、大手企業を中心に導入する会社も増えているようです。確かに給料を払っている経営者からすれば、自宅で働く社員にも緊張感を持ってもらい、仕事に集中してもらいたいと考えるのは理解ができます。

しかしリモートワーク中の社員からすると、自宅にいるときも「サボっているかどうか」を常に監視されている状態というのは、相当にストレスフルであるのは間違いありません。自宅というプライベートな空間にも上司が入り込んでくるような気分になり、ストレスでかえって生産性が落ちてしまうことも考えられます。