事故物件になれば物件の資産価値はぐっと下がる
まず一つ目の事故物件になってしまったという損失について。
室内で自殺された場合、いわゆる事故物件になってしまい、物件の資産価値はぐっと下がってしまいます。今は事故物件を載せるサイトもあるので、事故があったことは延々と残ってしまうからです。売却する時には、よほどの好条件が加わらない限り、売買代金は数百万単位で下がるでしょう。
月々の家賃収入だって激減します。
最近でこそ「家賃さえ安ければ気にしません」と、自殺直後の部屋でも入居する人も増えましたが、一般的には「自殺した直後の部屋には……」と、その部屋に住んでくれる入居者を確保することが難しいのです。
そうなると賃料を極端に下げるか、あるいは当面、募集をせずに空室にしておくことになってしまいます。結果、家主のその間の収入は減ります。
中には自殺された部屋だけでなく、「気持ち悪い」と別の部屋の住人まで退去されてしまうことも少なくありません。そうなるとまた募集もしにくく、家主側の収入に与える影響は計り知れないのです。
これだけではありません。すぐに発見してあげられればいいのですが、そうでなかった場合、匂いを取る等の特殊清掃も含め、原状回復費用が通常よりかなり高額になります。
「賃貸借契約」は相続される
これらの費用を全部合算すると、軽く数百万円になってしまうのが現状です。家主からすると、例えばこの金額を自殺した人の親族などに全額支払ってもらったとしても「事故物件にされた」苦々しさは消えません。しかしそれでも払ってもらわなければ、賃貸経営そのものを揺るがすほどのダメージとなるのです。
一方で請求される方も、親族を失った悲しみに加え、このような予期せぬ高額請求を受けてしまうと、払いたくても払えないというのが現実の話ではないでしょうか。
こうして家主は、一つ目の大きなダメージを受けるのです。
そして二つ目のダメージ。入居者がお亡くなりになった時、問題になるのは賃貸借契約が相続されてしまうということです。
今でこそ賃貸物件は珍しくもなく、日本全体からすると空室や空き家もあるくらいですが、そもそも法律ができた時代には、賃借権というのは貴重な財産でもありました。その権利が相続されてしまうのですから、賃借人が亡くなれば、その相続人がお部屋を継続して使って家賃を払ってくれない限り、相続人に契約を解除してもらわねばなりません。しかも解除の法律効果は、相続人全員と解除しなければならないというハードルもあります。
ところが自殺の場合は、この解約手続きがとても難航するのです。なぜなのでしょうか。