躍進する中国企業に負けられない

それに加えて、米国での寒波発生も半導体の需給を一段と逼迫させた。その結果、米国では自動車生産が減少している。半導体の供給不足が続くことは、米国の期待インフレ率を押し上げる要因の一つだ。

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他方、中国では清華紫光集団傘下の長江存儲科技(YMTC)が国際的な競争力の向上を目指して半導体メモリの開発と生産力の強化に取り組んでいる。中国共産党政権は、補助金政策などによって国内企業の半導体設計、開発、生産能力の向上を強力に支援している。

自国を中心とした持続力の高い半導体のサプライチェーンを構築し、さらには先端分野での中国の台頭を抑えるために、バイデン政権は半導体産業への支援を中心とした2兆ドル(約220兆円)規模のインフラ投資計画の実現を目指している。

3位のキオクシアを4位と5位が狙う理由

マイクロンとウエスタンデジタルが、それぞれキオクシア買収を検討している背景には、そうした環境の変化がある。両社にとって重要なことは、世界トップクラスの半導体の設計、開発、生産能力を手に入れ、韓国、中国の半導体メーカーに対する競争優位性を発揮することだ。

マイクロンはDRAM市場で世界第3位、NAND型フラッシュメモリ市場で第5位だ。シェア面で同社は韓国勢の後塵を拝しているが、技術面では176層の3D(3次元)NAND型フラッシュメモリを世界で初めて出荷するなど、世界トップの技術力を発揮している。マイクロンはキオクシアを手に入れることによって経営体力(開発力や競争力、供給体制など)を引き上げ、名実ともに世界トップの半導体メモリメーカーの地位を目指したい。

争奪戦はこれから熾烈化する

ウエスタンデジタルにも同じことがいえる。NAND型フラッシュメモリ市場で第3位のキオクシアと第4位のウエスタンデジタルのシェアを合計すると、トップのサムスン電子を上回る可能性がある。ウエスタンデジタルは、旧東芝メモリ時代からキオクシアと四日市工場(三重県)を共同運営してきた。事業運営面での親和性が高い部分があるため、買収後の組織統合などは進めやすいとの見方もある。

ウエスタンデジタルが世界のメモリ市場で存在感を発揮するためにキオクシアは手放せない。逆に、キオクシアが他社に買収されると、ウエスタンデジタルの競争力は低下する恐れがある。ウエスタンデジタルがさらなる競争力の発揮を目指し世界トップのNAND型フラッシュメモリ企業の地位を目指すために、キオクシア買収は重要な手段の一つだ。

その一方で、投資ファンドを経由してキオクシアに資金を提供している韓国のSKハイニックスも影響力を強めたい。