融資決定金額は約9兆3000億円の規模に
全国銀行協会の三毛兼承会長(三菱UFJ銀行頭取)は2月18日の記者会見で、コロナ禍で苦悩する中小企業への資金支援について聞かれ、こう答えた。
「昨春のコロナ禍の本格化から間もなく1年が経過し、これまでに調達した借り入れの期限が到来する企業、およびコロナ関連の融資の据え置き期間が終了していよいよ返済が始まる企業において再び資金繰りがタイトになることも想定される。他方で、コロナの影響が長期化する中、資本性資金の支援要請も増えてくると予想している」
民間金融機関は昨年5月以降、コロナ禍に対応した実質無利子・無担保融資で中小企業を支援している。その融資実績は今年1月末までに申し込み受付件数は約53万件、融資決定金額は約9兆3000億円に達する。
三毛会長はさらに言葉を継いだ。
「今年1月単月の融資決定件数は約1万7000件、融資決定金額が約2500億円と、単月の融資決定金額が2兆円前後となっていた昨年6~7月のピーク時から落ち着いているとは言えるものの、今後の影響については、引き続き注視していかなければならないと考えている」
「休廃業・解散」の「隠れ倒産」は約5万件に急増
三毛会長の見方が披瀝される今、不良債権という死肉に群がるハゲタカが乱舞する可能性が指摘され始めている。
メガバンクの幹部によると、新型コロナウイルスの感染拡大により世界的に企業倒産が増加傾向にあり、破綻もしくは破綻予備軍の債権を買い取る不良債権ファンドの組成も相次いでいるという。
「不良債権ファンドと言えば聞こえがいいが、いわゆるハゲタカファンドです。1997~8年の金融危機、2008年のリーマンショック後もこうしたハゲタカファンドが大挙して日本に上陸し、金融機関の不良債権を破格の安値で買い取り、暴利をむさぼりました。コロナ禍の今年もその歴史が繰り返されそうです」(メガバンク幹部)
1990年代後半の不良債権処理の悪夢がよみがえるような光景だ。
実際、今年の企業倒産は増えると予想されている。コロナ禍での政府や自治体、金融機関の資金繰り支援が功を奏して昨年の企業倒産件数は通年で7773件と、コロナ禍の下でも30年ぶりの低い水準にとどまった。だが、「休廃業・解散」したいわゆる「隠れ倒産」は逆に約5万件と急増している。