デリバリーへの注力にも成功した
このように比較すると「コロナ禍で飲食業全体がどうしていいかわからない時期に、たまたま顧客がファミリー主力で、事業構造がテイクアウトに向いていたマクドナルドに棚からぼたもち需要が転がり込んだ」ように感じるかもしれません。が、少なくともそこにデリバリーの付加価値を加えたのは日本マクドナルドの経営手腕だったはずです。
2020年にはマクドナルドにウーバーイーツの配達員が頻繁に出入りするのを見かけました。しかしマクドナルドはそれ以前から「マックデリバリー」という自前のサービスでデリバリーに乗り出していました。つまりイートイン、テイクアウトに加えてデリバリーを販売の柱にしようとする意思が明確だったのです。このためコロナ禍で他社よりもスムーズにデリバリーに注力することができました。
6月になり緊急事態宣言が解除されると、逆に日本マクドナルドの店舗業績は年間を通じて最悪の状況に落ち込みます。客数は5月同様に2割減でまだ戻ってこない。一方で巣ごもり消費が終わることで客単価の異常な特需も終焉します。6月、7月は既存店舗の売上でみると我慢の2カ月であったことがわかります。
松屋はメニュー開発で客単価を上げた
8月に入ると、マスクは着用しながらも外出できる生活が戻りました。とはいえこわごわという感じで、繁華街はそれなりに密が戻りつつ、それなりに元通りではないという新しい日常が始まりました。
飲食業各社が生き残りをかけて踏ん張る中で、各社とも顧客が十分には戻ってこないもどかしさを経験します。着席型飲食業の代表格としてのすかいらーくグループを見れば、緊急事態宣言時に半減した客数はほぼほぼ4分の3までしか戻らず、工夫をして客単価を上げても売上は2割減。これが多くの飲食店の平均像でしょう。
個食型外食の代表格の松屋でも客数の戻りはやはり8割程度。しかしジョージア料理のシュクメルリが話題を集めたように、メニュー開発のチャレンジを続けることで10月以降、客単価を前年比10%前後と松屋はビフォーコロナとは違うレベルに引き上げることに成功しました。このようなメニュー開発で成功した外食業では、松屋のように顧客2割減の状況下でも売上1割減といった業績を上げられたと思います。