創業以来ほぼ全員リモートワークという会社「キャスター」を経営する石倉秀明氏の下には、コロナ禍で企業・マネジャーから続々相談が寄せられるようになったという。葛藤する企業の姿から見えてきたのが、そもそも「多様な働き方をする人たち」のチームでパフォーマンスを上げることができない日本企業の現実だった。具体的に何が問題なのか、「マネジメント・シフト」をどう進めるべきなのか。近著『これからのマネジャーは邪魔をしない。』から特別公開する──。(第1回/全2回)

*本稿は、石倉秀明『これからのマネジャーは邪魔をしない。』(フォレスト出版)の一部を再編集したものです。

自分の「仕事」が分からない日本企業のマネジャーたち

「マネジャーの仕事とは何ですか?」と問われた時、あなたならどのように答えるでしょうか。

上手に部下を動かすこと、一体感を作ること、メンバーを成長させること、できる人材を育てること……多くの人は明確に答えられないのではないかと思います。実際、私がそのように質問しても、ふわっとした意見が返ってくることが多いと感じています。

部長・課長クラス向けのセミナーなどで、参加者に個人的なミッションを尋ねると、明確に答えられる人はほとんどいません。出てくる答えも、「組織マネジメントです」「部下を管理して動かすことです」などと紋切り型の答えばかり。

マネジャー自身が、何ができたら成功かがよくわかっていないため、結果として、始終指示を出す、会議で突っ込みを入れるといった行動に終始してしまうのです。

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最高のマネジャーは「邪魔をしない」

私の考えているマネジャーの仕事はシンプルです。チームに与えられたミッションを、チームで達成すること。これだけです。

ところが、マネジャーやリーダーになると突然、「あれもできなければいけない」「これもできなければいけない」と、まるでスーパーマンのような働きを考えてしまいます。

石倉秀明『これからのマネジャーは邪魔をしない。』(フォレスト出版)

メンバーをまとめて、モチベーションを上げて、部下を動かし、成果が出なければ叱咤激励しったげきれいして、評価もしっかりできて、人を育てる……。昨日まで自分がやるべき仕事をしていて評価された人が、マネジャーやリーダーになったからといって急に全部できるはずがありません。

もちろん、チームのミッションの達成のためには、メンバーが育っている必要がありますし、仕組みも整えないといけません。やるべきことも多いでしょう。ただ、マネジャーやリーダーがまずやるべきは、本当の仕事をしっかりと因数分解して、明確にすることではないでしょうか。

その意味で、本質的には、「ミッションの達成だけがマネジャーやリーダーの責任であり、その実現に向けてメンバーへの働きかけをする」ということがマネジャーの仕事なのです。

極端に言えば、最初からミッションが実現できるチームであれば、これといってメンバーに働きかける必要はありません。邪魔をせずに、チームの動きを見守っていればいいのです。