4条件なしに当事者意識は持てない

この4条件は、じつは「当事者意識を持つ」ための条件でもあります。

よく「仕事に対して、当事者意識を持とう」などと言われます。「意識」という言葉が入っているため、本人が主体的に備えないといけないもののように考えられがちですが、4条件がそろわないと「当事者」になどなれません。

たとえば、上司の中には「自分の仕事を奪いにこい」などと言う人がときどきいますが、少なくともその人と同じ権限と、知っている情報をすべて与えなければ不可能です。

当事者意識はマインドの問題と思われがちですが、会社の仕組みの問題です。メンバーが当事者になるための条件をしっかり整えなければなりません。自分が渡せる情報や権限はすべて渡して、各人の活動を見守ることが大切です。

それがうまくいけば、自分で考え、実行できる範囲も広がり、結果的に成果も出しやすくなりモチベーションが上がるような循環が生まれやすくなるかもしれません。

情報の透明性や明確な権限があれば、当事者として主体的に動く人も増えてくるはずです。ときにはメンバーが違う仕事のやり方を訴えてくる場合などもあるでしょう。その意見が真っ当であれば、本人のミッションは変わらないことを条件に任せてみるのもいいと思います。

情報を透明にして不信感を防ぐ

次に透明性です。私が情報の透明性にこだわっている理由はいくつかあります。

ひとつには、チーム内に「疑心暗鬼」を生まないためです。とくにリモートワークの場合、上司やメンバーの物理的な姿が見えません。すると、自分がいないところで何かが相談されているのではないかなど、疑念を抱きやすくなります。簡単に言えば、会社の人間を信じられなくなるわけです。

それを避けるために、できる限りすべてをオープンにしていく必要があります。そのため、私たちキャスターは、個人情報と人事情報以外はすべてオープンにしています。全員の給与も、社員であれば自由に見られるようになっています。

参加したければ、役員会に参加することも自由です。役員会は基本的に月曜日に開いていますが、私のカレンダーがオープンになっているのでスケジュールを確認できますし、URLを記してあるので誰でも自由に入れます。

会社に対する余計な疑心暗鬼をなくし、メンバーが自走するために必要なすべての情報にアクセスできるようにしています。

「いや、上が決めたから」は最悪

透明性にこだわるもうひとつの理由は、会社の方針やルールなどを定めた基準を明確にするためです。

社員が知りたいのは、役員が何らかの方針を決めたという事実ではなく、「なぜ」その方針にしたかです。

たとえば、役員が決めた内容を部長がメンバーに伝える時、「それはどうしてですか?」という質問に対して「いや、上が決めたから」という返答は最悪です。役員が会社の方針を決めた理由をきちんと伝えないと、部長は「自分は関係ない」というスタンスだと解釈され、メンバーもまたそうなります。

方針やルールに納得できていないと、どうしてもパフォーマンスに影響が出てしまうという社員は少なくないでしょう。給与にしても、金額に納得して働きたいはずです。

ですからキャスターでは、営業であれば標準給与はいくらで、目標を達成するといくら上がり、達成できないといくら下がるという給与のルールを明らかにしています。

そのルールを全員に公開し、納得したうえで働いてもらう。役員が好き勝手に会社を動かしているわけではないことを示し、余計な不信感を抱かせないためにも、情報の透明性は非常に重要なのです。