漢方的な視点──「気・血・水」という物差し
漢方的な視点──「気・血・水」という物差しを使って自分の体質を大まかにつかむと、薬膳の基本素材を上手に選べるようになる。
元気、やる気、気力などという言葉があるが、“気”は生命力そのもの。
「漢方では生まれるときに両親から“先天の気”をもらうと考えます。年とともにだんだんと先天の気が減っていきますが、食べものや呼吸で“後天の気”を補えば、生き永らえます。気が尽き、食べられなくなると、死に至ります」(宗形氏)
先天の気は生まれ持った遺伝的エネルギーのため増やすことはできないが、後天の気が満たされれば全体の気の減少をゆるやかにできるというわけだ。
疲れが抜けない、だるい状態が続いているときは、“気”が不足しているサイン。うるち米や芋類、豆類などのほか、鶏むね肉やサワラ、タイなどの淡い味のものを中心に胃腸に優しい温かい食事を心がけたい。
「気が上がりやすい、カッカしやすい人は気を下げる貝類やシナモンを取るといい。反対に緑茶などは沈みがちな気を上げ、高揚させるような働きがあります」(根本氏)
髪は“血の余り”、頭皮は血の状態を表す
“血”は体に栄養を与える赤色の液体を指し、不足すると乾燥肌になったり髪がパサつく症状が起きるとされる。
血を補う食材はニンジンや牡蠣、レバー、卵など。乾燥肌の改善にはキクラゲやサフラン。白キクラゲは古くから男性の強壮、女性の美肌に効果があるといわれる。
髪は“血の余り”といわれ、頭皮は血の状態を表すと考えられている。抜け毛が増えるのは「血の質や血行が悪いため」と根本氏が言う。
「自分の頭頂部を触って、温かく、ぶよぶよしていたら、汚れた血が上に上がって髪の毛が抜けやすい状態といえるでしょう。血を汚すような甘い菓子類、粘膜を充血させる香辛料は避けたほうがいいですね。頭皮の血流増加を促すのはクルミですが、大量に食べると血が汚れると考えられているので、1日3粒までにしてください」
美髪の作用があるのはごま。黒、白、茶の3種類のうち、最も優れた作用があるのは黒ごまという。
「ごまは古くから滋養強壮食品として知られています。実際にセサミンやセレンなど老化を防ぐ抗酸化物質が豊富で、タンパク質や脂質、ミネラル、ビタミン、食物繊維など、体に必要な栄養素をほとんど含む食品です。日々のメニューにどんどん取り入れてください。末梢の血行障害を改善します」(同)
目の充血をとるなら、菊花茶やスイカズラ茶。中国では古くから健康のために花茶を飲む習慣がある。