筆者が元会員から入手したセミナーの台本には、起業準備の最重要事項としてチームビルディング、つまり勧誘が挙げられている。

写真=筆者提供
セミナーの台本。具体的な勧誘方法や、上納金15万円の調達方法などが書かれている

幹部たちは新入会員に対し「『環境』も当初の50人から始まり現在は1万人になっている。これはどの企業よりも速く、われわれはその仕組みが詰まったプラチナチケットを手にしている。この価値が分かる人に『環境』を広めて仲間を増やそう」と、自分たちが特別な集団であることや勧誘行為が「有意義な知恵を広める」行為であると強調してモチベーション付けを図っていた。

ちなみに、「環境」ではこの「1万人」という数がよく使われるが、筆者が取材した際に聞かれた実数は最盛期で6000~7000人程度であった。おそらく会員に特別感を与えるために、数字を“盛って”いたのだろう。

ハードな活動は「スーパーウルトラハードワーク」、略して「SUHW」

「環境」では「現場」「事業計画」といった言い換えのほか、独特の用語を内部で共有することでやる気を出させていたという。

「勧誘のための合コン手法を学ぶ『合コンは人生だと思え講座』というセミナーがありました。これは合コンに対して、人生と同じくらい真面目に取り組むことを促すもので、「○○は人生」という言い回しは『環境』でよく使われていました。

これに周囲もうなずいているのを見ると、何となく大事なことに思えてきてしまうんです。改めて聞くとよく意味が分かりませんが……。また、『朝昼晩晩晩』という言葉もありました。これは『1日空いている場合、朝1件、昼1件、夜3件予定を入れてチームメンバーを増やした』という『環境』創始者の成功体験から生まれた言葉のようです」とCさんは語る。

この創始者の武勇伝にならって、多くの会員が「朝昼晩晩晩」にならって平日夜3件の勧誘にいそしんでいたようだ。このようなハードな活動は「スーパーウルトラハードワーク」、略して「SUHW」と呼ばれ、成功に近づく努力として扱われているという。

創始者の行動を手本とする習慣は多岐におよび、そのほかにも創始者や幹部が使っている顔文字1つに至るまですべて真似することが徹底されている。

「この言葉の通り、勧誘に加えて深夜にまで及ぶミーティングを行い午前2時~3時に就寝する生活を送っていたのですが、無理がたたったのか、血便が出ることもありました。

いま思うと異常ですが、師匠もかつて血便を出してまで勧誘していたことがあるらしく、環境全体のセミナーでそのことを自慢していました。ちなみに、寝るのが遅すぎて日中は居眠りを頻発してしまい、職場で問題になることも少なくありませんでした。これは他の元会員からもよく聞く話です」