希望する配属先に入るために会社に働きかけ「配活」する学生

何十人、何百人という新人を各部署に割り当てる以上、新人の中には希望する部署に配属されないという「配属ガチャ」が当然発生する。それでも以前は「就社意識」が強く、意に沿わない配属先であっても終身雇用が約束されていたので我慢する人も多かった。

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しかし、最近の若手社員は自ら描くキャリアに即した専門的なスキルを磨き、いずれは専門性を武器に転職したいという人も増えている。そういう人たちは「不本意な配属」に敏感になっている。そのため希望する配属先に入るために会社に働きかける活動をする学生もおり、「ハイカツ」(配属活動)と呼ばれている。

ラーニングエージェンシーの「2020年度新入社員のキャリアに対する意識調査」(2020年4月28日発表)によると、会社員に「将来会社で担いたい役割」を尋ねた質問で「専門性を極め、プロフェッショナルとしての道を進みたい(専門家)」と答えた人が31.1%だった。

その理由では「いざというときに専門性を活かして仕事をしていきたいから」が54.6%と一番多かったが、この数値は2014年の調査開始以来、最も高くなっている。

とくにコロナ禍で経営環境が劇的に変化する中で自分の将来に対する不安も大きくなっているだけに専門性を少しでも早く身につけたいと思う新入社員も多いだろう。

配属先が「希望通り」文系出身者60.5%、理系出身者73.5%

一方、企業側もキャリアや専門性志向の高まりを受けて、できるだけ希望部署に配属させる方向にある。

マイナビの「2020年卒学生モニター調査」(2021年1月22日)によると、現在の配属先が「希望通り」と答えた文系出身者は60.5%、理系出身者は73.5%となっている。

希望職種別で見ると、理系は「技術・研究系」職種希望は90.3%、「IT系」職種希望は91.8%と、いずれも希望通りに配置された割合が9割を超える。

また、「事務・管理系」職種(総務・人事・経理・事務など)希望の場合は80.2%と比較的高い割合で希望通りとなっていたが、「企画系」職種(広報・マーケティング・企画・商品開発など)希望では25.0%と低い。つまり75%の人は希望したが配属されなかった配属ガチャのハズレ組だ。

ただし、企画・マーケティング職に新入社員が就くにはハードルが高い。マーケティング職は最も経営に近い職種であり花形の職種だが、常に市場競争にさらされる業態では、市場の分析力を持ち、商品の市場性を判断し、将来性を予測できる総合的能力が求められる。

消費財メーカーの人事課長は次のように話す。

「こうした知識やスキルは一朝一夕に身につくものではない。まず入社後に営業、開発、管理部門に配属し、5~6年の経験を経て事業企画やマーケティング部門に配属されるケースが多い。最も顧客に近い営業現場のことを知らなければ苦労することも多く、いきなり企画部門に配属することはめったにない」