アートという形でなければ表現できなかったもの

アートを鑑賞するときに大切なことは、「情報から入らない」ということです。たとえばピカソのゲルニカは、「1937年に起きたスペインの内戦を描いた作品」という情報をあらかじめ知っているだけで作品を理解した気になりがちです。でもそれを知っているからといって作品を理解したとは言えないと私は考えています。

アーティストが伝えたかったものは情報ではなく、アートという形でなければ表現できなかったメッセージです。現代アートに触れるときは、アーティストという一人の人間の視点に気持ちを向け、どうして作品が生まれたのかをじっくり考えてみてください。そうすると、アートへの興味が湧いてくると思います。

撮影=西田香織

そして、できるだけ多様なアートに触れたほうがいい。好きなアーティストを見つけて、その作品だけを追いかけるのも楽しいですが、最初から選り好みしてしまうのはもったいないです。何事においても引き出しが多いほうが面白いし、それが人生の豊かさにもつながると思います。

私にとって現代アートとは、「世界のどこかにつながる窓」です。いろいろな窓を覗いてみて、合わなければ通り過ぎればいいし、面白そうなら中に入ってみる。その先の世界が、人生に新たな価値をもたらすかもしれません。