ツルハHDが3.3倍、コスモス薬品が3.9倍。中堅ドラッグストアでは、クスリのアオキが6.1倍の伸びである。2009年に約494億円だった売上高が、2020年には約3000億円と、驚異的な売上成長率だ。「クスリのアオキ」が大量出店を開始した時期に、青木宏憲社長がスキージャンプの「K点越え」の大量出店を開始すると比喩的に宣言したが、見事に「K点越え出店」をやり切ったことがわかる。

2009年の売上高一位はマツモトキヨシHD、二位はスギHDだったが、11年後の2020年には、一位ウエルシアHD、二位ツルハHDと、「第三次成長期」の11年間でランキングが大きく入れ替わっていることもわかる。Genky DrugStores(以下、ゲンキー)、薬王堂、サツドラHDといった中堅ドラッグストアも、それぞれ3.2倍、2.7倍、2.4倍と売上高を大きく増やし、親会社がスーパーマーケットのバローグループである「中部薬品(店名「V・ドラッグ」)」も、10年間で2.8倍だ。

未上場の「富士薬品(店名「セイムス」)」も2.7倍と、大手だけでなく、地域に密着した特色ある「リージョナルチェーン」までも成長したことがわかる。ただ一方で、マツモトキヨシHD(1.5倍)、カワチ薬品(1.2倍)、キリン堂HD(1.2倍)は、この10年間で売上高がやや伸び悩んでいる。

1兆円企業が複数誕生する可能性も

2020年の売上高で、ウエルシアHDは8682億8000万円、ツルハHDは8410億3600万円、コスモス薬品は6844億300万円と、この三社は「1兆円企業」の大台を視野に入れている。

また、経営統合を発表しているマツモトキヨシHD(売上高約5900億円)とココカラファイン(売上高約4000億円)の売上高を合計すると、ほぼ1兆円になるので、近い将来にドラッグストアの1兆円企業が複数誕生することになるだろう。

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ドラッグストア第三次成長期は、M&Aによる規模の拡大ができたかどうかが成長に大きく影響している。とくにウエルシアHD、ツルハHDは、大量出店と同時に、志を同じくするドラッグストア企業との積極的なM&Aによって規模を一気に拡大した。

一方、コスモス薬品、クスリのアオキ、ゲンキー、薬王堂などは、直営店の高速出店によって、M&Aに頼らず規模を拡大してきた。店舗数も売上高と同様に、この10年間で大きく伸ばしている。

もっとも店舗数の多いドラッグストア企業はツルハHDで、グループ全体で2176店に達している(2020年決算時点)。同じくウエルシアHDは2012店、マツモトキヨシは1717店となっている。