ドラッグストア業界の急成長が止まらない。月刊『マーチャンダイジング』主幹の日野眞克氏は「成長の理由は、出店戦略にある。小さなエリアに集中的に出店することで、地域のシェアを獲得し、周辺の繁盛店の売上を奪うことができる。今後、1兆円企業が次々と誕生する可能性もある」という——。(前編/全2回)

※本稿は、日野眞克『ドラッグストア拡大史』(イースト新書)の一部を再編集したものです。

日本の薬局
写真=iStock.com/winhorse
※写真はイメージです

エリアを絞った「ドミナント出店」で急成長したドラッグストア業界

Dg.S(ドラッグストア)が右肩下がり時代に成長できた理由として、「小商圏のドミナント出店」という戦略の側面もある。

ドミナント出店(戦略)とは、エリアを絞って同一地域に、集中的に出店するチェーンストア戦略を指す。大量出店を開始したドラッグストアは、まずは小商圏立地で成り立つ便利な店を目指し、便利な店になるために、医薬品だけでなく、化粧品、日用雑貨、さらには食品と、積極的に取扱商品を拡大した。

取扱商品を増やすことによってドラッグストアでの「買物目的」が増え、消費者の来店頻度が高まり、一世帯当たりの支出金額も増えて、少ない人口でも成立する「便利な店」になったのだ。先述したように、初期の食品強化型ドラッグストアの中にも、食品の安売りによって広域集客し、繁盛店をつくった企業も存在したが、この大商圏型の店舗は結果として店数を増やすことができなかった。

そこで、一店舗で何十億円も売るような繁盛店を目指さず、一定の売上に達したら近隣に店舗を出店し、自社競合によって意図的に一店舗の売上を下げるドミナント(高密度)出店を進めた。