意識していなかった「障害者」を考えるように
そこから、希望探しの旅が始まりました。
息子の病気が判明して、これまでまったく意識していなかった「障害者」という存在に、ピントが合ってきました。
そういえば、知り合いの日本人家族にも知的障害のお兄ちゃんがいたなとか。今まで自分のことで精一杯だったから、そういった人に目を向ける余裕がなかった。小4のときに塾のテキストで、「耳の聞こえない女の子が雪が本当に『しんしん』と音を立てると思っている」という物語を読んだときに、「豊かな世界だなあ」と子どもながらに感じた記憶とか。
会社と家を行き帰りしながら、車イスに乗った人や白杖を突いて歩く人に目が向くようになりました。けれども僕自身、彼らと直接話したことはありません。幸せなんだろうか。見えない子ってどうやって育てたらいいんだろう。なにを仕事にするんだろうか。
わらにもすがるように、妻とともに息子のケアをしながら、たくさん本を読みました。
仕事は? 夢は? 200人に会いに行く
「障害者 幸せ」「障害者 福祉」「視覚障害 育て方」「視覚障害 仕事」なんて思いついた言葉を片っ端から検索して、30冊ほどかき集めて、読み漁りました。すると、情報が古かったり具体的ではなかったり、「これって今ならスマホでできるじゃん」みたいなこともたくさん書いてありました。もう、家で悩んでいてもしょうがない。そこで、「障害当事者に会いにいってみよう」と思い立ったんです。
まずは知人にひとり、軽度の精神障害のある方がいたので、その人に時間をとってもらうことにしました。
「どんなふうに育ったんですか?」「どうして今の仕事を始めたんですか?」「夢はなんですか?」──。そんなことを単刀直入に聞きました。そしてみっちり1時間、話を聞いた後、こう尋ねました。「ほかに素敵な方、いませんか?」。
障害当事者に会って、話を聞いて、その場で連絡をとってもらって、また次の人に会いに行って。障害のある当事者だけではなく、その家族、雇用している経営者。
合わせて、3カ月でおよそ200人に会いにいきました。