ある面では親露的だったトランプ前大統領も、欧州向けに米国産天然ガスの輸出を増やす意図からノルドストリーム2に反対、この計画に参加する欧州の企業に制裁を科す構えをみせていた。1月に誕生したバイデン新大統領は、欧米流の民主主義とは異なる価値観を持つロシアに対して、トランプ政権以上に厳しいスタンスを見せている。

是々非々での対応に終始せざるを得ないドイツ

こうした環境でも、ドイツは国内の政治的な要請に基づき、是が非でもこのノルドストリーム2を完遂するスタンスを堅持している。そうしたドイツの振る舞いは、一枚岩となってロシアに圧力をかけたい欧米諸国にとって、文字通りのスタンドプレーだ。欧米とロシアの関係悪化を通じて、ドイツが抱える様々なジレンマが浮き彫りになっている。

温室効果ガス規制などの環境対策の必要性が高まる一方で、この問題が持つ政治的な性格もまた日に日に強まっている。ノルドストリーム2に関してドイツが抱えるジレンマは、そうした環境問題が持つ高度に政治的な性格を、端的に物語っている。皮肉にも、環境先進国を目指したがゆえにドイツは深刻なジレンマを抱える事態に陥ったわけだ。

「ドイツは環境対策の先進国である」というポジティブなイメージが先行しがちであるが、国際政治や経済外交の点から解き直すと、そのことがドイツの行動を制約していることにも気づく。ドイツが抱えるパズルを解くことは容易ではなく、今後もドイツは様々な矛盾を抱えつつ、是々非々での対応に終始せざるをえないだろう。

その実、ドイツがEUを束ねるスーパーパワーとして伸び切れないのは、国益を追求するうえで日和見主義的なスタンスが強く、それゆえに様々な矛盾を抱えているからだともいえる。とはいえ、そうした面はフランスなど他のEU諸国にも共通する問題である。結局のところEU自体が、争点ごとに結束と反発を繰り返す運命を抱えている。

なお一般的に日本はグローバルな環境規制作りで出遅れているとされるが、一方それゆえに欧米の動向を見定めることができる。対ロシアや中国との関係でも、欧米とは基本的に歩調を合わせつつも、一種の緩衝地帯として機能することが可能だ。こうした独自の優位性を有効活用していくことこそが、外交戦略に求められるところではないか。

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