日本が目指す合計特殊出生率は、フランスの今
子育てにまつわる家庭の経済的負担が、社会全体でカバーすべきリスクと認められているフランス。先進国で最も子育て支援にお金を注ぐ国の発想法は注目に値するが、実は日本にも数年前、似た発想で国の制度を変えようとした政治家たちがいた。
子育ての経済的リスクを社会で認め、保険制度で財源を確保・分配しよう――2017年、自民党の若手議員らが発案した「こども保険」制度だ。
その後の消費税増税や幼児教育・保育無償化の流れの中で、こども保険案は残念ながら立ち消えになってしまった。子育ての経済的負担は保険制度でカバーすべきリスクと認められない・他のやり方をするべきだ、との声も多かった。
しかしこのこども保険の試みを、筆者はとても心強く感じた。「子育てにお金がかかりすぎる」ことが子を望む人々にブレーキを掛けている実態を真正面から捉え、国の子育て支援支出金が他の先進国と比べて少ない事実に向き合ったのだ。それらに対し「ならお金を工面しよう」と財源論まで踏み込んで直球を投げ返そうとした姿勢は、画期的だった。是非また機を見て、「子育て支援のための財源をどう確保するか」が日本社会に問われ、議論されてほしいと願う。
子どもを持ちたいと願いながら、諦める人々を、一人でも少なくできるように。
子育ての経済的リスクに国が対処しているフランスの、最新の合計特殊出生率は1.86。合計特殊出生率1.36の少子化大国日本で、政府が掲げる目標値は、まさにその1.8である。