日本の子育て支援は「市町村が担うもの」

それにしても、子ども手当だけで10種類とは。筆者自身もそのうち3種類を受給しているが、そこまで種類が多いとは知らずにいた。

「さまざまな形の家族に何がしかの援助を送るには、それだけバリエーションが必要です。日本には、国の子ども手当は何種類あるんですか?」

そう興味津々に逆質問されて、筆者は一瞬言葉に詰まってしまった。「児童手当法」で定められた全国共通の子ども手当は、「児童手当」1種類だからだ。

とはいえ日本の子育て支援金は、児童手当だけではない。

まず日本では、「子ども・子育て支援法」によって、子育て支援は主に地方公共団体、特に市町村が担うものとされており、都道府県や国は法整備や助成金でその円滑な運営を支える、という分担がある(※)。

※参考文献:渋谷博史、塚谷文武、長谷川千春著『福祉国家と地方財政-改訂版』(学文社)

庭で一緒に楽しそうにサッカーをする多民族な子供たち
写真=iStock.com/Sushiman
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それらの子育て支援事業にはひとり親への支援金(児童扶養手当)や医療費助成のような全国規模の制度もあれば、各市町村が独自に行う事業も多い。例えば東京都品川区は、区民対象の生活支援給付金を、中学生以下の子どもには増額して実施している。支援はもちろん金銭援助だけではなく、保育所や児童館などサービスの形でも行われる。

地域のニーズに合わせられる一方で、地域格差も広がる

自治体主導で支援するメリットは、地域の特性やニーズに合わせた形が編み出せることだ。一方、同じ国内でも、住む場所により得られる支援が異なってしまう地方格差問題もまた指摘されている。参議院が2012年に発表した経済調査資料では、国の関与する家族関係給付の5割を超える規模で、地方の単独事業が行われていることが明らかになった。日本全国で子育て支援に使われている約3分の1の金額が、住む場所によって享受できる人とできない人のいる事業に注がれている、ということだ。

「フランスが子ども手当を国レベルで行う理由が、まさにそれですね。私たちの国の現金給付には、“同じ国内に住む市民は、同じ手当を得る”という原則があります。財源に国家予算や国の徴収する税金が入っているなら、なおのこと。それは地域を問わず、全国規模で公正に給付されるべきと考えます。もちろん自治体独自の事業は存在しますが、国のそれとは規模が全く異なりますね」

日本の状況を説明する私に、前述のルプランスさんはそう答えた。