シャドーボクシングをしながら徘徊するのが日課
・中畑さん(SV、男性・30代前半)
眉毛の上で前髪をまっすぐ切りそろえたおかっぱ頭と、毎日取り換えているのかいないのかわからないお決まりの紺色のシャツ、最近のはやりとは真逆のダボダボのパンツ(というか彼の場合、「長ズボン」という言葉の方が似合います)を、先っぽが腰の後ろまで達しようかという長いベルトでぎゅっと締め上げた姿がトレードマーク。聞かれてもいないのに、「学生時代は野球とボクシングと沖縄空手をやっていた」と触れ回り、鉛筆のようなひょろひょろの体でシャドーボクシングをしながら私たちの派遣会社のエリアを徘徊するのが日課でした。
彼も、他の管理者たちから「使えないやつ」として疎まれていたそうです。毎日平然と遅刻してきて、勤務中には休憩時間でもないのに度々20~30分姿を消すばかりか、自分の退勤時刻が過ぎても職場を離れず、パソコンの前で意味のない暇つぶしをしたり、人目につかないパーテーションの陰で居眠りをしたりして時間をつぶし、遅刻をした分以上の残業代をしっかり稼いで帰るのですから、無理もありません。
肝心の業務知識もあやふやで、LD陣の答えの方がよほど頼りになりました。
そのくせ、前職が学習塾の講師(そんな人間がなぜいきなり、コールセンターのSVとして採用されたのでしょう?)だったせいか上から人に命令する口調が抜けず、働きもしないのにそんな物言いをするものだから、周囲と円滑なコミュニケーションなど取れるはずがありません。LDやOPたちと頻繁にぶつかり、完全に浮いた存在になっていました。
発注されているスタッフ数確保こそが、最優先事項だった
小野さんにしても中畑さんにしても、他の複数の管理者が何度も、「業務の妨げにしかならないし、職場の風紀も乱れる」と、彼らとの契約解除を派遣会社に進言したのだそうです。しかし派遣会社は、コールセンター運営会社側から発注されている毎日のスタッフ数確保こそが、最優先事項だったようです。事なかれ主義に徹して管理者たちからの言葉を聞き流し、決して二人の首を切ることはありませんでした。
もっとも中畑さんの方は9月末の契約期間満了を待たず、例によっての自身の吹聴によれば、どこかの学校法人の「ナンバー3として迎えられた」とかで、途中退職したのですが。
・大貫さん(OP、女性・30歳前後)
男女を問わずやたら“自分語り”をしたがるのが、このあたりの年代の特徴なのでしょうか。
日本生まれの日本育ちで、帰国子女ではないらしいのですが、本人曰く、外資系の企業や欧米人相手の仕事を転々として世界を飛び回ってきたそうです。でもその割に、彼女をもてはやす若い男性OP陣相手に得意げに語っている英語知識は、私でもはっきりわかるぐらい貧弱だったりします。
そして、外資系にいたから自分は日本の職場での常識に従う必要などないとでも思っているのか、とにかく勤務態度がひどいのです。電話を取っていない時は、ずっと隣りや後ろのOPと声高に世間話をしているか、座面上であぐらをかきながらパソコンでネットサーフィンをしているか(いずれも、職場の規定で禁じられていることです)。