「どうあがいても、給付金をもらうのは無理だと思います」

時には他のOPが忙しく受電している中、ヘッドセットをしたまま勝手に電話回線を閉じ、“自主休憩”を決め込んでいたことさえありました。それらを何度管理者に注意されても改めないどころか、あとで自分をとがめた管理者の陰口を振れ回っているのだから恐れ入ります。

けれども一番唖然とさせられたのは、私の席のすぐそばで彼女が電話を取っていた時のことでした。

どうやら入電者は、自分の条件で持続化給付金の対象になるかどうかを尋ねてきたらしいのですが、いろいろ伺ってみた結果、給付対象からは外れる方であることが判明したようでした。すると彼女は、気安い口調でこう言い放ったのです。

「どうあがいても、入電者様が給付金をもらうのは無理だと思います」

耳に入ってきた言葉に、私は耳を疑いました。

どうあがいても?
もらう? 

コロナ禍で日々のやりくりにさえ苦しんでいるからこそ、給付対象となるかどうかを問い合わせてきているのに、それを「どうあがいても」と評する無神経さ。

〈人に請うて自分のものとする〉(広辞苑)ことを意味する「もらう」という言葉を、正当な権利を行使しての給付金取得ができるか否かを尋ねている他人に対して使う、日本語力のなさ。

「名古屋って何県でしたっけ? 名古屋県?」

いずれも、コールセンターのオペレーターとして絶対に使ってはならない言葉だと、なぜわからないのでしょうか。

それから数カ月がたったある日、彼女の大声のおしゃべりが離れた場所にいた私の耳にも入ってきて知ることとなったのですが、9月の契約満了後に、外資系の自動車メーカーだか販売会社だかへの就職が決まったそうです。今も彼女がそこで大過なく職務に就いていることを、祈らずにはいられません。

・松川さん(OP、女性・40歳前後)

大貫さんとはまた違った意味で、〈他にも仕事はたくさんある中、なぜコールセンターのオペレーターに応募してきたのだろう〉と思わずにはいられない人でした。

業務に必要な基礎知識をいつまでたっても覚えようとせず、同じことを何度も管理者に聞いているばかりか、小学生レベルの一般常識も怪しい部分があるのです。いつだったか私の隣に座っている時、入電者の住所を聞いている途中でわざわざ通話を保留にしてLDを呼び、

「名古屋って何県でしたっけ? 名古屋県?」

と尋ねたこともありました。

また、OPは入電者とのやりとりが終わった後、その記録を専用ソフトに入力しなければいけないのですが、そのソフトが「突然ダウンして、入力途中だった記録が消えちゃいました」と言っては、やはり度々管理者を呼ぶのです。