この流れはもう戻らないかもしれない

【小林】初産の平均年齢(30.7歳、2016年時点)を超えてしまうと、第1子は産んだとしても、2人目、3人目をやめてしまうのではないか……。

今の日本は2人兄弟姉妹が平均値ですが、今後は1人っ子に近づいていくかもしれない。この流れが元に戻るには何年もかかるし、もしかすると戻らないかもしれない。

【野地】小林さんが言ったようなことは現実に進行しているわけですね。

【小林】妊娠届出数を今年も注視していけば一目瞭然でしょう。また、産み控えによる影響に関しては完結出生児数(結婚持続期間が15年から19年の夫婦の平均出生子ども数)を見ていけば分かります。

さらに、もうひとつデータがあります。厚生労働省は毎年、12月に翌年の人口や出生数などの推計値を出すのですが今回は初めて見送っています。昨年は出生数だけでなく、喜ばしいことですが、実は死亡の数も減っているのです。高齢者がコロナ禍で外出を控えた影響と言われています。

撮影=プレジデントオンライン編集部

日本は子どもが生まれないだけでなく、高齢者が長生きをする社会ですが、それが大きく進行したのが昨年です。

待機児童問題は解消するが…

【野地】大少子化という危機に対して、御社はどうやって対応していこうと思っているのですか。

【小林】少子化が進むとマーケットが縮小していきます。これまでは待機児童が問題になっていましたけれど、2021年からは待機児童は減少するでしょう。そして、その状況が続いていくでしょう。

すると、どうなるのか。これまで認可保育園には子どもたちは何もしなくても、入ってきました。

それが、今後はたとえ認可保育園であっても、園の方から子どもたちに「来てください、選んでください」とアピールする時代になるわけです。

同じように小学校、中学校、高校、大学、そして企業も少なくなった数の子ども、学生を奪い合う時代が来るでしょう。さらに、商品、サービスの企業も少なくなっていく消費者に対してアピールしなければならない。それが大少子化なんです。

あえて陶器とガラスの食器を使う理由

【野地】小林さんが初めて園を作った頃は無認可で、子どもに来てもらうために、ずいぶんとアピールしたと聞きました。

【小林】はい。無認可だと認可園よりも料金を高くしなければならない。しかも、始めたばかりだから周囲の評価もありませんでした。預けるお父さん、お母さんにしてみればリスクが大きいわけです。なんといっても、命よりも大切な子どもを預ける相手ですから。