緊急事態宣言が出ても、多くのお父さん、お母さんは保育園を利用しているのですね。

特に0歳、1歳といった乳児の保護者の場合、在宅勤務はよけいに疲れるという声をよく聞きました。子どもたちはママやパパが家にいれば遊んでもらえると思うから、パソコンに向かっていても容赦しません。「抱っこして」と寄ってくるんでしょう。会社勤めより疲れた、白髪が増えたと言っていた保護者もいます。

妊娠届の件数は25%も減少

【野地】では、本題です。小林さんが生まれる子どもの数が激減していると気づいたのは昨年のいつ頃からですか?

【小林】母子手帳の発行部数が激減した2020年5月の妊娠届出数の数字を見た時です。女性は妊娠したら市町村の役所または保健所に妊娠届を提出して母子手帳をもらいます。母子手帳の発行部数は翌年、生まれる子どもの数に表れる。

月別妊娠届出数の推移

図表を見ていただければ昨年5月の妊娠届の数が平年よりも約25%も少なくなっていることが分かります。従来、妊娠届が多いのは5月と10月、それが昨年はどちらも減少しています。

今年、つまり、2021年は昨年に比べて生まれてくる子どもの数は2割くらい減るんじゃないでしょうか。これはもう、大変なことです。保育園だけの問題ではなく、さまざまな分野に波及してくるわけですから。

晩婚化に加え「産み控え」が起きている

【野地】コロナ禍では、「時計の針が進んだ」と言われています。これまで在宅勤務、時差出勤のような働き方改革はなかなか進まなかったが、新型コロナ禍の影響で、とたんに現実となった。少子化についてもこれまでは緩慢に進んでいたのが、それに拍車がかかったのでしょうか。

【小林】専門家による分析が必要ですが、私はそうだと感じています。そして、危機はこれだけではありません。たとえ、コロナ禍が終息したとしても、私は出生数がすぐに元に戻ったり、まして、上向いたりするとは思っていません。

【野地】それはどうして?

【小林】それが産み控えです。昨年、コロナ禍で出産を控える人が増えたと読んでいます。それで出生数が減ったのです。

おそらく「今年はやめて、来年以降にしよう」と決めたのでしょう。ところが、今年になってもまだ終息するかは分かりません。すると、もう1年延ばす。もしくは2年、延ばすかもしれません。

仮に2年延びるとなれば、今は晩婚化も進んでいますから、例えば女性の初産年齢はさらに上がるでしょう。