新型コロナウイルスが終息した日本はどうなるのだろうか。全国で認可保育園を運営し、児童3000人を抱えるコビーアンドアソシエイツの代表取締役、小林照男氏は「これからは『大少子化』時代がやってくる」と予測する。子どもが激減する未来で保育園はどうやって生き残るのか。ノンフィクション作家の野地秩嘉氏が聞いた――。
コビーアンドアソシエイツ代表取締役の小林照男氏
撮影=プレジデントオンライン編集部
コビーアンドアソシエイツ代表取締役の小林照男氏

「大少子化」が始まる

年の初めになると、各メディアは「大予測」とか「今年活躍する50人」といった特集を組む。もはや年中行事になった感があるが、たとえノーベル賞学者を100人集めて予測させても、予測というものは必ず外れるものだ。

「今年活躍する50人」にしても、43人くらいは活躍しないで消えていってしまうのが現実ではないか。

人間がやることだから、予測や予言は絶対に当たらないのである。ヘブライ語のことわざには「人間は計画を立て、神はそれを笑う」というのがある。

その証拠に昨年初め「新型コロナが世界の災いとなる」と予測した人は世界中にたったひとりもいなかった。予測や予言は話半分に聞くか、もしくは冷笑的に対処しておくものだろう。

さて、これから始める話は予測ではない。確固たる事実だ。しかも、現在も進行している。それがコロナ禍の影響による出生数の減少、「大少子化」の始まりである。

大少子化が続いていけば、人口は減少し、マーケットは縮小する。ビジネスパーソンはきたるべき危機に備えて、何をしたらいいのだろうか。

なお、この危機は日本だけのことではない。人口大国であっても、コロナ禍の昨年、今年は出産を控える夫婦が少なくなかった。現在は目先の緊急事態宣言、飲食店、旅行関連企業の窮状に目がいってしまうが、私たちはやがてやってくる危機に自分たちの責任で準備し、対処しなければならないのである。

ここで早くから大少子化に気づいて警鐘を鳴らしていた保育事業者コビーアンドアソシエイツ代表取締役の小林照男氏に実態と対策を聞いてみた。

緊急事態宣言が浮き彫りにした保育の重要性

小林氏が代表を務めるコビーグループは現在、39施設(学童クラブ含む)、約3000人の児童を抱える。園の規模は全国10位前後だ。来年度は新職員70人を採用予定。

【野地】小林さんは保育園の代表として二十数年間、子どもたち、保護者と触れ合ってきました。まず、子どもたち、保護者の様子ですが、緊急事態宣言で何か状況に変化がありますか。

【小林】前回の緊急事態宣言(2020年4月~5月)の間、私どもの保育園と学童クラブはすべて開けていました。それは今回も変わっていません。

すると、地域によって明らかな変化が見られたのです。都心にある園の登園率は1割前後。残り9割の家庭は在宅勤務をしながら子どもを見ていたわけです。

一方で都市郊外にある保育園の登園率は7割程度。保護者は地元の小売店であったり、地元で学校の先生をやっていたり、医療関係者だったと思います。在宅勤務できない仕事に就いていたので、子どもたちの登園率が高かったのです。

自治体からの要請で、登園自粛や休園という形をとりましたが、利用がまったくないという園はありませんでした。保育を必要としている保護者は、どのエリアにも必ずいたのです。保育がエッセンシャルワークであることを改めて認識しました。