なぜ、二度も同じような失敗を繰り返したのか
電事連幹部は「原発を知り尽くしている関電がなぜ、二度も同じような失敗を繰り返したのか」と疑問を呈する。
その最大の要因が福井県高浜町と元助役・森山栄治氏(故人)の間で起こした関電幹部への金品受領問題だ。
「原発を知る幹部が一掃された。役所との交渉役もいなくなり、完全に昔の内向きの組織に戻ってしまった」と関電の中堅幹部は漏らす。
関電幹部が原発のある自治体関係者から金品を受領して工事を発注することは電力会社の公益性から考えると問題がある。しかし、電事連幹部が「原発は地元の理解なしには存在し得ない。地元とどうやって信頼関係を作っていくか。それは一朝一夕に築けるものではない」と語るように簡単にはいかない。「関電の場合、馴れ合いが乗じて逆に森山氏にのみ込まれる結果となってしまった」(同)という事情がある。
「社長就任からの半年間、青森県に出向くことはなかった」
関電の森本社長にも社内から批判があがる。
「中間貯蔵施設の問題は社長に就任してから最初に迎える最大の問題だったことはわかっていたはず。なのに、社長就任からの半年間、青森県やむつ市に出向くことはなかった」(関電幹部)という声が上がるのも当然だろう。
原発に依存する関電は福井県にある3基の原発の再稼働を確実にするためにも、使用済み核燃料の処理問題に筋道をつけることは最重要な課題であることは、関電の社員なら誰でもわかることだ。しかも同じ失敗を二度繰り返す失態を冒した。
昨年10月に菅義偉首相が掲げた「2050年温暖効果ガス排出実質ゼロ」宣言でも原発は必要な電源として盛り込まれた。新型コロナウイルスの感染拡大で財政難に悩む地方自治体にとっても雇用の受け皿として原発の再稼働を求める声は増えている。
関電の冒した失態は東日本大震災からまもなく10年がたつ原発への信頼回復に水を差した意味でも罪は重い。