2017年にもむつ市の施設は浮上していたが…
ところが、それが今回再び約束が果たされなかったことになる。しかも、2017年にも使用済み核燃料の一時保管先として浮上したのがむつ市の施設だった。
しかし、当時、「関電がむつ市の中間貯蔵施設の事業会社に出資する方向で最終調整」との一部報道が伝わり、地元軽視と反発したむつ市の宮下市長が東電と原電に直接説明を求める騒動に発展。両社は関電から事前の説明はないと主張。回答を突きつけられた関電も「そうした事実は一切ない」と公式に否定。選定作業に水を差された経緯がある。
かつては中間貯蔵施設の候補地として、関電の美浜原発がある福井県美浜町や小浜市、火力発電所がある和歌山県御坊市が取り沙汰された。しかし福井県内は西川知事と岩根社長の約束で対象外となり、福島第1原発事故後に原発不信が強まる中で御坊市案もほぼ消えた。
3基のうち1基でも稼働すれば月25億円の費用圧縮
「関電の歴史は原発の歴史でもある」と言われる。
1970年に大手9電力で初めて原発を稼働させた。他社に先駆けて原発を推進、石油危機を経て1980年代半ばには発電コストが低い原子力を発電の中心に据えた。安全性や使用済み核燃料の問題を別にすれば、当時主力の石炭や石油火力発電のように二酸化炭素も出ない「クリーン」な発電手段だ。震災前の2010年3月期は、総発電量に占める原発比率が54%に上昇した。
しかし、東日本大震災に伴う福島第1原発の事故を受け、関電の原発も相次いで停止。それに伴い、最終赤字が4期続いた。二度の電気料金の引き上げで息をつき、原発が再稼働すると値下げを実施した。震災後に4基の再稼働を実現し、いまや国内で動く9基のほぼ半分を占める。
さらに検査を終えた高浜や美浜原発の計3基についても関電幹部が「中間貯蔵施設の問題をクリアして、3基が動けば、経営再建に大きく前進する」と話すように、原発が経営を左右する。
3基のうち1基が稼働すれば月に約25億円の費用が圧縮でき、稼働済みを含めた7基の原発で安全対策工事に1兆円を超える巨費を投じても採算は合うとそろばんをはじく。