過激な民族主義政党「AfD」の人気はしぼんだが…
近年のドイツでは、メルケル首相擁するCDUとそのライバル政党であり大連立のパートナーでもある中道左派の社会民主党(SPD)の人気が低下していた。代わりに旧東独を中心に過激な主張を展開する民族主義政党「ドイツのための選択肢(AfD)」や、新興の環境政党「同盟90/緑の党(Bündnis 90/Die Grünen)」が有権者の支持を集めた。
CDUと姉妹政党CSU(キリスト教社会同盟)の支持率は今年1月には25%程度まで落ち込んだが、有権者に新型コロナウイルスの感染対策が評価されて40%近くまで回復した。反面で、一時はCDUから有権者の支持を奪い取っていたAfDの人気は、有権者の関心が難民問題などから新型コロナ対策に移ったこともあって急速にしぼんだ。
1月に誕生する新党首の下でCDUが挙党一致体制を築き上げることができれば、CDUは9月の総選挙を有利に戦うことができるだろう。しかし新党首がAKKのように党内の掌握に苦心して求心力を失えば、CDUの支持率は低下することになる。当然、秋に予定されている総選挙でCDUは苦しい戦いを余儀なくされる。
「赤緑連合」の組み合わせに注目が集まる
いずれにせよ、CDU/CSUが単独与党となる可能性は極めて低い。そのため他の政党と連立を組むことになるだろうが、ドイツ政治の安定を考えれば、引き続きSPDとの間で大連立が組まれることが望ましい。しかし長年にわたる大連立の結果、CDU/CSUの与党内野党的な存在と化したSPDが大連立の継続に二の足を踏むかもしれない。
そのため、CDU/CSUが支持率ベースで第2党につけている「同盟90/緑の党」との間で連立を組む可能性もある。確かに政党としても実力を着実につけてきた「同盟90/緑の党」だが、与党として政権実務に携わった経験は乏しい。それに北大西洋条約機構(NATO)に反対するなど、CDU/CSUと立場の隔たりが非常に大きい。
ここで注目したいのが、復活を狙うSPDが支持率ベースで第2党につけている「同盟90/緑の党」とタッグを組む可能性だ。政党のシンボルカラーがSPDは赤、「同盟90/緑の党」が緑であるため「赤緑連合」と言える組み合わせである。両党の支持率を合わせればCDU/CSUと拮抗するため、十分に考えられる選択肢だ。