あなたの脳の中にある「システム1」「システム2」とは

「システム1」と「システム2」の違いと特徴を理解していただくために、図表2をご覧いただきたいと思います。

出所=『ケースメソッドMBA実況中継 04行動経済学』

【岩澤】この図を見て、すぐに思い浮かぶことをおっしゃってください。

【A】真ん中が低いです。

【岩澤】そうですよね。そのほかにパッとわかることはありますか?

【B】左のブロックと右のブロックとで、ブロックの数が違っています。

【岩澤】そうですね。それもパッとわかりますよね。形が違いますから。

【C】どれもてっぺんだけ色が黒いです。

岩澤誠一郎『ケースメソッドMBA実況中継 04行動経済学』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

【岩澤】色もパッとわかりますよね。類似性、高さ、色ですかね。似ている、似ていないはヒトの「システム1」が持つ大変高い能力のようです。

たとえば我々は、東京駅の人混みの中で、知り合いに似ている人を発見すると「オッ」と思います。しかしこんな作業を分析的、解析的に行うのはとても難しいことで、たとえば人工知能(AI)はごく最近まで、ネコをネコと見分けることもできなかったわけです(※5)

類似性、高さ、色-そういったことはすぐにわかるのに対し、たとえば図表2の左のブロックの個数は何個ですか? と聞かれたらどうでしょう。それはもちろん、時間をかければ数えられるわけですが、時間はかかるし、それなりに労力を要しますよね。ブロックの体積や表面積を求めなさい、という問題に対しても同様です。こうした問題を解決する際に使用する脳が「システム2」なわけです。

人の認識はコンテクストによって変わる

【岩澤】ここでひとつ注意しておきたいのは、ある特定の仕事が、常に「システム1」または「システム2」に割り当てられているわけではないということです。難しい仕事が、ヒントの与えられ方次第で容易な仕事に変わったりすることがあるからです。例をお見せしましょう。

出所=『ケースメソッドMBA実況中継 04行動経済学』

【岩澤】この字はなんと読むでしょうか?

【D】「B」ですかね……。

【岩澤】そうかもしれません。他の意見、ありますか?

【E】「13」でしょう(笑)。

【岩澤】ですよね(笑)。果たしてこれは「B」なのか、それとも「13」なのか? ディベートをやってもよいのですが、今日一日かけても結論が出ないかもしれません(笑)。