『文春オンライン』の登場で越えた三つの壁

「確実にデバイスチェンジ(媒体の変化)が起こっている。紙の読者はもちろんいるし、紙の雑誌の収益は当然大きい。でもその一方で、紙の雑誌なんて世の中に存在しない、くらいに思っている人たちも大勢いる。ウチのコンテンツは他のどこにも出ていないスクープだから、適切なデバイスに載せてあげれば、絶対に読まれるということがわかってきた。

柳澤健『2016年の週刊文春』(光文社)

『文春オンライン』の登場で『週刊文春』は三つの壁を越えた、と僕は最近現場によく言うんです。

ひとつは時間の壁。『週刊文春』は毎週木曜日発売ですけど、ほかのメディアに追いつかれそうなら『文春オンライン』にもっと早く出すこともできる。

ふたつめは量の壁。紙の雑誌は、いくら刷ってもせいぜい五〇万部から六〇万部。回し読みされても一〇〇万人にしか届かない。でも『文春オンライン』なら、時には何千万人が読むわけです。

三つめは世代の壁。いまの若い世代は、そもそも紙の雑誌を手に取らない人も多い。でも、スマホで『文春オンライン』にアクセスしてくれればその壁を越えられる。

だったらデジタルファーストで、紙の雑誌をやめた方がいいのか? そうじゃない。自分が編集長になってみてわかったんですけど、紙という制約があることで記事のクオリティは間違いなく上がります。〆切と字数制限があり、校正も二回通る。一度刷ったら直せないから、裏取りの緊張感も半端ない。『週刊文春』がウェブオリジナル記事を出すこともありますが、やっぱり緊張感が違う。その上、ウェブでは長いストーリーはなかなか読んでもらえない。本物のスクープは、やっぱり紙で出すべきなんです」(加藤晃彦)

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