沢尻エリカ関連だけで1億PVを稼ぎ出した

女優の沢尻エリカが麻薬取締法違反で逮捕されたのは一一月一六日。驚くべきことに、逮捕当夜の『文春オンライン』には、家宅捜索のわずか三時間前にクラブで踊り明かす沢尻エリカの映像がアップされた。

「沢尻が逮捕されたのは土曜日。ちょうど僕たちがデスク会議をやっていた夕方に第一報が入った。ウチは金曜深夜に沢尻がクラブで踊っている動画を撮っていたから、僕は『オンラインにすぐに出そう』と言いました。新谷さんの発案で、二〇一二年に『週刊文春』がスクープしたときの記事と写真を一緒に出したら、異常な数のPVを稼ぎ出したんです」(加藤晃彦)

「フジロックフェスティバル」でドラッグをキメて踊りまくる沢尻エリカ。スペインで一緒に大麻やエクスタシー(合成麻薬)を服用した外国人ドラッグディーラーの写真。元夫である高城剛の証言。大麻使用の陽性反応が出たために専属契約を解除するというスターダストの通知書─。

映像でも写真でも記事内容でも『文春オンライン』は他の追随を許さなかった。沢尻エリカの逮捕は『週刊文春』の驚くべき取材力と、エイベックスに忖度してこれまで何も報じてこなかった他のメディアの弱腰ぶりを再び世に知らしめたのだ。

無料サイトである『文春オンライン』は、数十万部規模の雑誌とは比較にならない数の人々に読まれる。沢尻エリカ関連だけで一億PVを稼ぎ出したこともあって『文春オンライン』はなんと月間三億PVを達成、瞬間風速ながら『日経電子版』や『朝日新聞デジタル』を超え、日本のすべてのニュースメディアで一位を記録した。

記者会見
写真=iStock.com/B4LLS
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「スクープ」はあとから収益を上げることがある

「ストックがビジネスになるということを、僕たちは沢尻逮捕の時に学んだような気がします。紙の雑誌は一週間ですべてが決まる。二〇一二年の沢尻の薬物疑惑スクープも、決して悪い数字ではなかったけれど、完売には至らなかった。ところが、七年前の記事や写真、動画を再構成して『文春オンライン』にアップしたら、ドカンと稼げるコンテンツに変身したんです。

沢尻逮捕と同じ頃に、嵐の二宮和也の結婚話の記事が出た。ウチは前年八月にふたりが海外旅行から帰国した直後に直撃していたから、その時の写真を『文春オンライン』にアップしたら、すごいPV数を稼ぎ出した。スクープはずっとあとになってから収益を上げることがある。ウチしか読めないオリジナルはやっぱり強いんです。

二〇二〇年一月に嵐の櫻井翔が彼女と一緒にベトナムとハワイに行ったとき、ウチはかなりの費用をかけてスクープしたんですけど、紙の雑誌の初速はよくなかった。発売日にその数字を見て、これはオンラインで稼いだ方がいいと判断して、五回に分けて連日のように記事を出したところ、六〇〇〇万PVを稼いでくれました」(加藤晃彦)

金額に直せば約二〇〇〇万円。紙の雑誌が七万部売れたのと同じ実入りになる。〈東出昌大独占告白「すべてを失いました」〉(二〇二〇年二月二七日号)の時はLINEで一本三〇〇円の記事が一万本売れた。九割が週刊文春に入るから、一本売れれば二七〇円。じつは紙の雑誌を一冊売っても、取次や書店の取り分を差し引くと、『週刊文春』に入るのは同じ二七〇円である。LINEで一万本の記事が売れれば、紙の『週刊文春』を一万部余計に売ったのと同じ計算になるのだ。