日本中が注目した前代未聞の会見の問題点
2025年1月27日、フジテレビは中居正広氏の女性トラブルと関連して自社の対応などが問題視された件(以下、本件)について2回目の会見をおこなった。会見の論点や問題点などについて筆者は、2月1日放送の同局系『週刊フジテレビ批評』や自メディアのYouTube、各種TV番組などで触れているため、ここで詳細には踏み込まない。簡潔に言うならば、同会見の論点は大きく次の4点に集約される。
2 女性からの当該事案に関する報告へのフジテレビによる対応の問題点
3 日枝相談役を含めた経営陣の責任論
4 広範なコンプライアンスおよびガバナンスの問題
こうした論点の多くは未解決のままであり、第三者委員会の調査に委ねられるが、1回目と違って2回目にはオープンな記者会見が開かれたことは、一定の評価がなされるべきだろう。半面、10時間以上におよぶ会見の是非や怒号が飛び交う記者の質問のあり方などは、新たな議論を呼んでいる。
不均衡なガバナンスはなぜ生まれるのか
こうした広範な議論がある中で本記事が注目するのは、フジテレビが問われた人権やコンプライアンス概念の困難さだ。会見において港浩一社長(当時)をはじめとする経営陣は、人権およびコンプライアンス意識の欠如を省みたうえで、謝罪を繰り返した。一方で注目すべきは、筆者による質問に対する、経営陣からの回答だ。筆者は、外部株主であるダルトン・インベストメントによって取締役の在任期間が「異常に長く」、かつ高齢化している現状が問題視されていることを踏まえ、高齢男性に偏ったマネジメントの是非を問うた。これに対してフジ・メディア・ホールディングスの金光修社長は、不均衡の是正は「コーポレートガバナンス・コードに記されているわけではない」としたうえで、こうした状況が適切なマネジメントを「阻害する要因にはならない」という趣旨の説明をした。
筆者はこの回答に非常に驚いた。なぜならば、実際に属性の不均衡が適切なマネジメントを阻んでいるかは状況によるだろうが、こうした話題に際して、不均衡なマネジメント体制は、真っ先に問題視されるような「一般論」であるからだ。
言うまでもなく、これは高齢男性であることそのものを問題視しているのではなく、特定の年齢層が大多数を占めていたり、女性の比率が極端に少ないなど、マネジメントの属性が偏っていることで、意思決定やリスク管理などの視点が偏重する問題を指摘したものだ。たとえば米経営学者のドナルドソンら(※1)は、企業が多様な利害関係者に責任を負うべきだと主張し、不均衡な経営陣は、多様な利害関係者の視点を十分に反映させることができなくなると述べている。またハーバード大学教授で社会学者のロザベス・モス・カンター(※2)の古典的な研究は、組織の多様性の欠如が、意思決定プロセスやパフォーマンスに影響を与えることを主張した。
こうした先行研究だけでなく、東証のコーポレートガバナンス・コード(※3)には、上場会社にとって「社内に異なる経験・技能・属性を反映した多様な視点や価値観が存在すること」は、企業の「持続的な成長を確保する上での強みとなり得る」という認識に立って「社内における女性の活躍促進を含む多様性の確保を推進すべき」だと明示されている。経営陣は、仮に本意ではなかったとしても、不均衡なマネジメント体制への問題意識を共有すべきであっただろう。
この経営陣による回答を見る限り、彼らの人権およびコンプライアンス意識の欠如に関する認識は、表層的な理解にとどまっていることが推察される。少し意地悪な見方をすれば、人権やコンプライアンスの内実について深い検討がないままに「時代性」を理由として、人権やコンプライアンス概念を持ち出している可能性すらある。
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