かつてはテレビも悪者だった

スマホをはじめとするICT(情報通信技術)との付き合い方は、多くの子育て中の保護者が直面する悩みだ。スマホ利用にはメリットとリスクが混在しており、否定的な意見が広がりがちである。一方で、2022年のUCLによる報告では、個別フィードバック機能のついた幼児向け算数学習アプリを使用することで学習能力が向上することが明らかになっている(※1)。学校教育ではプログラミング教育の必修化や1人1台端末の導入が進むなど、ICTが子どもの学びに欠かせない存在となっている。これらの背景には、急速に変化する社会への対応が求められていることがある。単に「禁止」することが解決策ではない。むしろ、スマホを正しく使いこなす力を育むことが、これからの社会を生き抜く子どもたちにとって必要不可欠なのだ。

放課後に小学生がスマートフォンを使用している
写真=iStock.com/SDI Productions
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筆者らは、02年からプログラミング教育に取り組み、05年には1人1台の学習環境の整備を提唱。10年以降はその実現に向けた政策提言や実践を重ね、課題解決に尽力してきた。ICTを使いこなす力は今や必須であり、教育を強化する最強の武器とも言える。ICTを活用した学びには「楽しく、つながって、便利になる」というメリットがある。映像や音声を活用すれば、子どもの好奇心を刺激しながら楽しく、わかりやすい学びを提供できる。先生と子ども、子ども同士、保護者や地域、さらには世界とつながり、教え合い、学び合える。個々の学習進度に応じた学びを提供することも可能だ。

ICTは詰め込み・暗記型の教育から、思考・創造型の学びへと進化させる手段であると考える。そして、ICTの影響は、産業にとどまらず、社会・文化・生活全般のあらゆる場面に変革をもたらしえるものだ。だからこそ、ICTを使いこなす力はこれからを生きる人たちの基礎教養となる。しかし、教育へのICT導入には強い反対の声もあった。

「ICTより外遊び」「体に悪影響がある」「コミュニケーション力が低下する」「ICTは子どもにとって百害あって一利なし」。

こうした批判的な意見はICTに限らず、新しい技術が登場するたびに繰り返されてきた。人はこれまでの生き方、暮らし方、働き方、価値観を否定されることを恐れ、批判を繰り返してきた。変化することが怖いのだ。テレビの普及に際しても“思考力が低下”するといった議論が巻き起こり、ゲームが普及すると脳への悪影響が指摘された。子どもたちが携帯電話を使い始めた際にも、規制の動きが見られた。

確かに、新しい技術にはメリットとデメリットが存在する。しかし、単に規制を加えるだけでは問題解決にはならない。重要なのは、メリットを最大限に生かし、デメリットを最小限に抑える使用方法を見つけることだ。新技術を過剰に恐れて排除することは、子どもたちの未来の可能性を制限することにもつながりかねない。

自動車運転における教習所での練習や、自転車運転における交通ルールの習得と同様に、デジタル機器の使用も、適切な指導を通じて最適な使い方を習得することが重要だ。しかし、教育分野は変化の速度が遅く、コロナ禍による臨時休校の際、多くの学校がオンライン教育に移行できず、学びが中断する事態が生じたことは記憶に新しいだろう。適切な環境が整備されていなかったためだ。

18年度に発表されたOECD(経済協力開発機構)の調査によると、日本はデジタル機器の学校での利用時間は加盟国の中で最下位。コンピュータを使って宿題をする頻度も最下位(※2)。学校のICT環境整備という側面では、コロナ以前の日本は途上国だったのだ。その事実を、コロナ禍を通じて、多くの人が認識した。しかし、コロナによる臨時休校を契機に、子どもたちが否応なしにデジタル環境で学ぶことになった。20年度には全生徒への1人1台端末の配備が急速に進められ、同年から小学校でのプログラミング教育が必修化された。この変化は、禁止どころか、学習においてICTが不可欠な要素となったことを意味している。

さらに、教育の情報化が注目される中で、未就学児のICT活用に関する相談が増えている。直感的に操作できるデバイスの普及により、デジタル機器の利用が低年齢化していることも背景にある。この傾向は国内外を問わず共通している。

23年4月に発表されたOECDの報告書によれば、加盟国全体で子どもがデジタルに触れるのは3歳以前に始まり、3歳や4歳の段階で多くの子どもたちがデジタル機器を使用し、日常的にオンライン接続していることが示されている。