あわよくばNTT東西の一本化まで目論む
ところが、NTTは、現在も政府が筆頭株主として約33%の株式を握り、NTT法に縛られて自由な企業活動は制約されたまま。移動体通信、固定通信、法人向けデータなどの事業が分社化しているため、あらゆるサービスを一体で提供できるKDDIやソフトバンクに後れを取り、このまま手をこまねいていてはジリ貧に陥るのは必至。ナショナルフラッグとして、GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)のような巨大IT企業に対抗することもままならない。
こうした窮状を打開するために導き出したのが、NTTグループが名実ともに一体化する「大NTT」の復活だ。
NTTは、第一歩として11月、稼ぎ頭のNTTドコモをTOB(株式公開買い付け)で完全子会社化した。次はNTTコミュニケーションズなどグループ各社の糾合で、あわよくばNTT東西の一本化まで目論んでいるといわれる。
だが、「大NTT」回帰に対するライバル各社の反発は必至なだけに、分断から再編へ新たな歴史を刻むためには、菅政権の強力な後押しが欠かせないのだ。
KDDI社長は「政府に料金を決める権利はない」と発言
NTTグループが仕掛けた値下げ競争は当面、高止まりしていた携帯電話の料金を下げるのに一定の効果をもたらすとみられる。多くの利用者が値下げを実感できるのは「3割以上」という調査もあり、「アハモ」は十分に期待に応えられそうだ。
ただ、単純に喜んでばかりはいられない。中長期の視点でみると、まるで景色が変わってくる。
本来、料金の値下げは、競争政策によって実現するのが「王道」。このため、歴代政権は、NTTグループを抑え込み、KDDIやソフトバンクの成長を下支えし、楽天モバイルや格安スマホ事業者の新規参入を推進してきた経緯がある。
この間、通信料金は、通信会社が自由に決められるようになった。従って、なりふりかまわず値下げを迫る菅政権に対し、「政府に料金を決める権利はない」と言い放ったKDDIの高橋誠社長の言は、通信各社の本音そのものといえる。
今後、圧倒的に体力に勝るNTTグループが、価格競争で大出血覚悟の「横綱相撲」をとれば、ライバル各社が追随するのは容易ではなくなる。とりわけ、楽天モバイルや格安スマホ事業者は存在意義を失い、壊滅しかねない。